黒死館殺人事件 (まんがで読破)黒死館殺人事件 (まんがで読破)
小栗 虫太郎 バラエティアートワークス

イーストプレス 2010-10
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「漫画で読破」シリーズが色々出ているのは知っていましたが、小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」まで漫画化されるとは…。
原作小説は手元にあるものの、4、5回チャレンジしてはその度に挫折していたり(今栞を確認したら、ちょうど半分位で止まっていました)。少しでも読んだ人は分かると思うのですが、とにかく探偵:法水麟太郎の語る蘊蓄が半端ない! 推理小説で探偵役が知識を披露しつつ謎解き、というのは特に珍しくもないとは思いますが(衒学趣味という言葉もある位ですし)、本作は寧ろ知識披露を延々と続けたいだけなんじゃないかとしか思えないくらい、その割合が多いのですよ。しかも探偵だけではなくその他の人物も、ナチュラルに彼と同等の頭脳を持っているらしく、取調べの最中にドイツ語の詩を交互に諳んじ合ったりとまぁやりたい放題です。そんな訳で、読み進めれば読み進めるほどに殺人事件の本筋を見失うミステリーという印象なのです…。彼らの披露する知識範囲を、個人で全てカバーできる人はどれだけいるんだろう。そもそもそれらが全部本当なのかどうかも定かじゃないらしいですし…w 挫折した人間が言うのもアレですが、とにかく「濃い」です。

そんな訳で、漫画の出来はこの際どうでもいいので筋だけでも理解させてくれと思い、思い切って漫画版を購入してみたのでした。所要時間1時間ちょい。BGMは勿論Eliphas Leviの「黒死館」
…こうして読むと、流れとしてはあくまで王道なミステリーだった印象でした(作品発表時の1930年代においてどうだったのかはさておき)。立派な屋敷、不可解なシチュエーションの殺人、怪しさ大爆発の住人達、終盤で明らかになる人間関係、ちゃんと存在する犯人の動機などなど。寧ろ思った以上のオーソドックスさに驚いた位でした。こうしてみると、作者の目的は、ミステリーの皮を被って、通常謎解きの装飾として使われるものをメインに文章を書きまくる事にあって、読み手はその言葉の洪水にクラクラしてさえいれば良いんじゃないかとすら思ったり。取りあえずメインの筋(メインかどうかはさておき)は飲み込んだので、改めて原作にトライしてみようかな…そのうち、気が向いたら、運が良ければ。

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自分の手元にある創元推理文庫版。法水麟太郎が登場する他の短編も収録。初出時の挿絵が雰囲気プンプンです。
日本探偵小説全集〈6〉小栗虫太郎集 (創元推理文庫)日本探偵小説全集〈6〉小栗虫太郎集 (創元推理文庫)
小栗 虫太郎

東京創元社 1987-11
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