SPEED-iD「UNHOLY NIGHT」(1999)

01. EVIL MOON RISING
02. BLACKOUT RIPPER
03. IN COLD BLOOD
04. HENRY LEE LUCAS
05. A PRAYER
06. THE HOUSE OF HORRORS
07. QUEER
08. ALICE
09. UNHOLY
10. VAMPIRE OF DUSSELDORF
11. SHOOT THE HEAVEN

全曲作詞・作曲:SPEED-iD

※原曲 03〜06、08、09:優朗「UNHOLY」(1997)/01、02、06、07、10:同「UNHOLY2」(1998)/11:SPEED-iD「「i-D THE M・A・S EDITION」(1997)

発売日:1999/??/??
品番:JI-T008

Members
Vocal、Bass、12 strings guiar、Synth、Programming:HENRY LEE EURO
Guitar:MARQUEE 24
Live drums Grooves and Programming:J.P.HAL.J


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SPEED-iDが欧州限定でリリースした、通算4枚目のアルバム。リリース後ドイツでツアーを行うなど、現在のV系界隈における流れを先取りしていたと言えなくもない……かも。当時優朗がプロデューサーを務めていたKEY PARTYからリリースされました。
本作は、ボーカリスト優朗がソロでリリースしていた「UNHOLY」シリーズをバンドでレコーディングし直したものがメインに収録されており、轟音ギターが前に出たサイケなロック色が強い1st「INNER DIMENSION」、クラブ・トリップホップ方面に急接近した「i-D THE M・A・S EDITION」「D・O・S EDITON」とはまた趣を変えた、インダストリアル要素を加えたゴシックパンクと言えそうな音作りになっています。

優朗さんがほぼ全ての演奏を手がけ打ち込みメインだったソロに比べると、冷たいシンセや潰れた打ち込みのリズムを挿入しつつもバンドサウンドがメインとなったことで、V系バンドを好む人にはある意味で聴きやすくなった印象。特にソロ1作目のUNHOLYは、曲によって音が潰れすぎている気もするので、その辺もレベルアップしているでしょうか。また日本語だった歌詞は全て英語に改められており、実際の殺人をモチーフにしたという言葉の重みという面においては、日本語を母語とする側にとってはどうしても伝わりづらくなってしまうのは致し方ないところかもしれません。

現時点の最新作「iNDEEP」でもセットで新録されている「EVIL MOON RISING〜BLACKOUT RIPPER」のダークな疾走感はやはりカッコ良く、EVIL〜での早口の語り+ブレイク→ラストのサビという流れは原曲よりツボだったりします。
津山事件をモチーフにした陰鬱な「IN COLD BLOOD(原曲:冷血 pt.2)」、ループするシンセとノイジーでヒステリックなギターが印象的な「HENRY LEE LUCAS」「A PRAYER(原曲:祈る男)」は原曲で感じた音の軽さが改善され、英詩ながらより邪悪さが感じられる気が。
歪みまくった愛を歌うダウナーなバラード「THE HOUSE OF HORRORS(原曲:悪魔の庭)」は、原曲とのアレンジの大きな違いはあまり感じませんが、極端な低音ボーカルの響きはやはり素敵。
対して「QUEER」はノイジーなアレンジから目茶苦茶ポップに変わっていて、最初聴いた時何の曲だか分からなかった覚えが……w(原曲でも歌メロは割とポップな方なのですが)。人を喰ったような歌い方も含め、キャッチーに振り切ったバウハウス、みたいな印象もあります。
「ALICE」「UNHOLY」も原曲よりも音が整理された結果、前者はロマンチックなメロディーが(モチーフは宮崎勤だけど)、後者は現在のゴシックロックンロールの音作りに通じるようなノリの良さがより前に出ている感があり、レベルアップしているかなぁと。
「VAMPIRE OF DUSSELDORF(原曲:デュッセルドルフの吸血鬼)」は、英詩の語りメインで尺が10分あるため、言葉がストレートに入ってくるソロバージョンに比べると、流石にダレちゃう人が居るかもしれませんが、中盤からの呻き声のようなシャウトを交えドロドロとした展開は、原曲以上の凄みを感じられるものとなっているかもしれません。でもこのアレンジを日本語で聴きたかった部分も確かにあったり。

本作は、2011年に現メンバーle;kaのコーラスを加えリマスターも行った半新録? 的再発盤が出ているのですが、何故か再発盤に入っていないのがラストの「SHOOT THE HEAVEN」。M・A・S EDITION収録バージョンは打ち込みメインでしたが、バンドサウンドメインのこちらは、テンポを若干落としながらもスリリングで冷たい疾走感を感じられるアレンジになっており、個人的にiDにハマる切っ掛けになった曲の1つという事もあり、どちらも甲乙つけがたいというか。

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ゴス・インダストリアルに寄り冷たくサイコな雰囲気を持つ本作、個人的には現時点でiDの最高傑作だと思っていますが、海外リリースという事からか、とにかく中古でもオークションでも見かけないアルバムでした(復活後しばらくライブ物販で売っていました)。上で述べた通り1曲少ないながら国内入手が可能になったので(初回盤は「iNDEEP」全曲が演奏されているライブ盤付き!)、気になる人は是非。
キーパ=ジャリ盤だらけ、のイメージで聴くと良い意味で裏切られると思いますよ……w

myspace

※ドイツのAmazonでオリジナル盤を取り扱っているようなので、興味のある方は↓
unholy night

参考リンク:ドイツのAmazonで購入する方法