ALI PROJECT「贋作師」(2012)

01. 贋作師
02. ALICE 同罪イノセント
03. 蓮華幽恋
04. 真偽贋者遊覧会
05. La verite
06. 野性双生児
07. 逝ける王女の肖像画
08. 真夏の憂愁夫人
09. 天譴と超克
10. RED WALTZ

全曲作詞:Arika Takarano
全曲作曲:Mikiya Katakura
Strings & 二胡 & Balalaika Arrangement 03、05、08、10:Yoshihisa Hirano
Strings Arrangement 07:Tsuyoshi Watanabe

発売日:2012/07/18
品番:TKCU-77139

Members
Vocals:Arika Takarano
作曲、Produced、Directed:Mikiya Katakura


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前作「汎新日本主義」から約2年ぶりとなったALI PROJECT12枚目のオリジナルアルバム。
ジャケットのモチーフは、ベラスケスの『マルガリータ王女像』ですが、彼女をテーマにしている楽曲(07)も入っています。


01. 贋作師
デジタルサウンド+軽くシンフォニックな仰々しいイントロにギョッとしますが、ボーカルが入ると気怠げなテンポで展開、かと思うとサビでは軽やかに突き抜け……と、アルバムタイトル曲通り聴き手を翻弄するかのような、展開の忙しいオープニングチューン。そんな濃さを持ちつつ、全体ではポップスとして成立させる辺りに、片倉三起也の職人芸がうかがえます。
1曲目からフルスロットルで仕掛けてきた印象。

02. ALICE 同罪イノセント
宝野アリカ自身による解説でも「『聖少女領域』の従姉妹版」と評されるように、アリプロのパブリックイメージの1つにもなっているアニメ関連タイアップ曲を想起させる、手数の多いリズム・早口の優雅な歌メロ・ストリングス音とデジタルサウンドをメインとしたアッパーチューン。既聴感が強いと言えば強いのですが、オリジナルアルバムではこの手の楽曲が必ずしも多くないこともあって、この王道感に逆にびっくりしたり。2曲目に配されることで、シングルから彼らを知った人にっとって入りやすいアルバムになっているのではないでしょうか。
間奏でのシンセのキャッチーなメロにもツボをぐいぐい押されます。

03. 蓮華幽恋
本作には幾つか二胡を使った楽曲がありますが、その中でも「Dilettante」(2005)辺りを思わせる、支那ゴス風味のバラード。
チャイナ色の強い哀愁メロディーと、打ち込みと二胡を前面に出した優雅ですがホラーっぽさも感じる音作りによって、儚さと凄みを併せ持った楽曲になっている気がします。
楽曲自体とは関係ないのですが、ブックレットにある蓮の写真がまた素敵。

04. 真偽贋者遊覧会
ギタリストの参加はなくとも、ギターの音が聴こえる曲がアリプロにはちょこちょことありますが、こちらがそんな曲にあたります。
執拗なまでに拍子をコロコロと変えながらも、全体の印象としては軽快な疾走感が強いアリプロ流のロックチューン。スピード感のあるサビや、その前や間奏などでの忙しないフレーズが心地良いです。
1曲目と同じ言葉を使いますが、こんなメロディーを集めて一つの曲にしたら、良くも悪くもカオスになりそうなものを(もしくはそれをウリにするか)、しれっとポップスとして成立させるさせるのが恐ろしいというか。
本作中で、個人的な一番を挙げろと言われたらこちらになるでしょうか。

05. La verite
宝野さん曰く「アリプロ流J-POP」。
確かに他の曲に比べると、二胡・ストリングス・リズムをメインにしたアレンジもスッキリとして聴こえますが、サビメロでは何気に勇ましい印象があったりと、流れの中で変に浮いて聴こえることもなく。
斜に構えた男の子が主人公っぽい歌詞に関しては、人によってはこの後の「天譴と超克」より刺さる所があるのかなぁとも思ったり。個人的に、この子はネットコミュニティどっぷりなイメージがあるんですが、どうでしょう……w

06. 野性双生児
テクノ寄りの音作りによるイントロから、激しく迫ってくるような曲調へ展開するハード寄りのナンバー。
この曲もギター音が目立ちますが(やっぱり打ち込み?)、そのギターやシンセのアレンジがどぎつい感触で、不気味でもあり力強くもありといった印象があります。

07. 逝ける王女の肖像画
ジャケットのモチーフにもなっている、中世スペイン・マルガリータ王女の肖像画と、それを描いたベラスケスをテーマにしたバラード。
ストリングスとメインに、所々語るような調子のボーカルを交えて切ないメロディで始まりますが、シンセが導入され始めると、若干不穏さを含んだアレンジになり、間奏では中東っぽさも感じるホラーなメロディーも顔を出し……とロマンチックな要素はありながらも、どこか歪な感じも受けます。
そのジャケットの元ネタ絵『赤いドレスのマルガリータ王女』ですが、ベラスケスは未完成のまま亡くなったため、弟子が完成させたそうです。終盤の歌詞はその辺りを描写しているのかな?

08. 真夏の憂愁夫人
和、と言っても和ゴス的な方面ではなく、もう少し地に足の着いた日本的なイメージを喚起させれられる、ストリングスと二胡の絡みが美しいバラード。サビに入ると、軽やかなテンポに乗ってちょっとレトロなメロディーが展開するのも好みを突かれます。
派手さという意味では、「真偽贋者遊覧会」のような曲と対極にありますが、そちらと並んで本作中印象的な楽曲。

09. 天譴と超克
2000年代中盤辺りから、所謂「大和系」な楽曲を発表していますが、本作ではこちらがそれにあたるのかな? と思っていましたが、そこをベースにもう少し広いテーマを書いてみました、といった所でしょうか。
「ALICE〜」と同じく、タイアップシングルから入った人が馴染みやすいであろう、滑舌悪い人お断りボーカルによる勇ましいメロディーを前面に出した楽曲ですが、実際そこまでテンポは速くなく、情報量の多い歌詞を乗せてズッシリと展開させてきた印象があります。
個人的には、宝野さんが「薄ら寒さ」と表現するような人達の曲も好きだったりはするので、何とも言い難い所ではあるのですが(苦笑)、敢えてアリプロ聴いてるよ、というような方にはかなり心地よく響く楽曲なのかなと。そういう意味でも色が分かりやすい曲なんだと思います。

10. RED WALTZ
最近のオリジナルアルバムでは、ラストをインストで〆るのが恒例となっていましたが(『禁書』の「月夜のピエレット」再録バージョンはボーナストラック扱い)、本作は久々にボーカル曲がラストに来ました。
タイトル通り三拍子のアレンジによる、ストリングスメインのドラマティックなバラードとなっており、ストリングスアルバムに入っていてもおかしくない楽曲。ストーリー性がありそうな歌詞といい、クラシカルと言うよりは東洋寄りの要素がありそうなアレンジといい、アルバムの後味がかなりコッテリしたものに感じられるのではないでしょうか。
このアルバムが、そこまでチャイナ要素が多いわけでもないのに「Dilettante」へ近しいものを感じるのは、この曲の存在が大きい筈。

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ここ数作のオリジナルアルバムは、分りやすさから少し距離を取っていたような印象もありましたが、本作では楽曲の幅広さ・濃さと共に「メロディーのキャッチーさ」にも力を入れているように思え、、最近のオリアルの中でも入門に適したものとなっている気がします。(最近オールタイムのシングルベストが出ましたが、アレはボリューム的に初心者向きではなさそうなので)
個人的に、「Dilettante」や「禁書」辺りが好きな人にもお勧め。


試聴あり
贋作師贋作師
宝野アリカ ALI PROJECT

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参考リンク
ALI PROJECT インタビュー(WeROCK City)
http://www.werockcity.com/2012/07/46034.html
宝野アリカによるアルバム解説(蜜薔薇翠星館)
http://www5b.biglobe.ne.jp/~alipro/gansakushi.html