V.A.『Cry-Max Pleasure Super 〜Loud,Trance and Violence for Extacy〜』(1995)

01.MAZOHYSTERIA / VICE NEVER DIE 〜悪徳ハ何時マデモオ前トオレノ胸ノ中ニ〜
02.FANATIC◆CRISIS / Mobius〜メビウスと哀星
03.CASCADE / See Saw
04.雫... / 終末
05.LA'CRYMA CHRISTI / ひび割れた鏡に映った私を殺した後…
06.SLIDE RARE / COOL DESERT TOWN
07.ZEDEKIAH / ZINGARA
08.LIPSTICK GUYS / U.K. JUNK STYLE
09.AFTER IMAGE / AFTER IMAGE
10.SCARE CROW / 枳殻という家

発売日:1995/05/24
品番:BVCR-1532


***

90年代にBMGからリリースされていた、V系中心オムニバスシリーズの1枚。
後にメジャーデビューを果たしたバンドも軒並み入っており、後年にはメジャー期との聴き比べを楽しむ、という性格も帯びたのかもしれません。
01.MAZOHYSTERIA / VICE NEVER DIE 〜悪徳ハ何時マデモオ前トオレノ胸ノ中ニ〜
作詞・作曲・編曲:MAZOHYSTERIA

emmureeのギタリスト:ハルカが在籍していたマゾヒステリア。
ザラついたサウンドによる、無骨で攻撃的なノリで突き進むのかと思いきや、サビに入るとメロウな面も感じられる疾走ナンバー。疾走と言うにはちょっとバタバタした印象も受けますが。
随分後になってフルアルバムを聴いたのですが、思った以上に曲の幅が広い印象を受けました。

02.FANATIC◆CRISIS / Mobius〜メビウスと哀星
作詞:石月努 作曲:Kazuya 編曲:FANATIC◆CRISIS

耽美な歌謡メロと、幻想的なムードのツインギターとシンセが印象的なミドルバラード。
ファナティックに関しては、インディーズとメジャーで割とくっきり楽曲傾向が分かれた印象があるのですが、こちらもその例に漏れず。
同時期のROUAGEがやっていてもおかしくないように感じるアレンジで、90年代インディーズのフォーマットをきっちり守っている感を受けますが、雰囲気モノ寄りの楽曲ながら、歌メロはあくまでメロディアスだったり、石月努の特徴的な低音ボーカルはこの時点で一定の出来上がりが感じられたりする辺りに、この後の活動の萌芽はあったのかもしれません。

03.CASCADE / See Saw
作詞:玉水英行 作曲:緒方正志 編曲:CASCADE

ノイジーなギターとウネウネ動くベースが耳に残るポップナンバー。この記事書くにあたって知ったのですが、アルバム『APOLLO EXERCISER』にも入っており、後に「やさしい風」というタイトルでリメイクもされているのですね。
カスケードに関しては飛び飛びにしか音源を聴いておらず、現時点でインディーズ時代もこの曲しか聴けていないのですが、「妙だけどポップ」という軸は変えないまま、時期によって結構楽曲傾向は何でもありだった印象があります。

04.雫... / 終末
作詞:紫楼 作曲:碑澄、紫楼 編曲:雫

確か「戦争」をコンセプトに活動していた記憶がある雫…。確かに歌詞を読むと、耽美な要素とは離れたダーク・サイバーな内容を感じられます。
楽曲の方は、ザクザクとしたギターをメインにサビではハモリコーラスも聴ける王道な疾走曲なのですが、個人的にはちょっと印象が薄いでしょうか。他のオムニバス収録曲を除き、現時点で単独音源は聴けていないので何とも言えませんが、アレンジにもテーマに沿ったものが感じられたなら、何か違った受け取り方があったのかもしれません。

05.LA'CRYMA CHRISTI / ひび割れた鏡に映った私を殺した後…
作詞:TAKA 作曲:HIRO 編曲:LA'CRYMA CHRISTI

キーボードをバックにした儚い雰囲気の序盤から、バンドサウンドに展開するミドルテンポのポップナンバー。
フレンチ歌謡と言えそうなサビをコッテリ歌い上げるTAKAの高音ボーカルや、各パートのソロなどで壮大さを感じさせるアレンジなどはこの時点で完成している印象があります。メジャー初期が好きな人なら遡ってすんなり入っていける楽曲ではないかと。

06.SLIDE RARE / COOL DESERT TOWN
作詞:YOWMAY 作曲・編曲:SLIDE RARE

当時の知られ方は、元SILVER ROSEのボーカル:YOWMAYの在籍バンド、という感じだったみたいですね。
頭からの疾走感を終始維持して走り続ける、ワイルドでシンプルな雰囲気のロックナンバーで、低音ボーカルとの親和性も良く、良い意味で一気に駆け抜けていく印象があります。

07.ZEDEKIAH / ZINGARA
作詞・作曲・編曲:ZEDEKIAH

本オムニバス中、最も攻撃的なサウンドではないかと思われるZEDEKIAH。
ザクザクとしたしたサウンドと複雑な展開、声色を使い分けるボーカル:蘭の存在感によって、プログレスラッシュとでも言えそうな奇怪な印象を残す楽曲となっています。
2分半程の尺で、歌詞カードの途中で急にフェードアウトするショートバージョンのような終わり方をするのが物足りないのですが、単独音源の方では全部聞けたりしたんでしょうか。もう1枚のオムニバス参加曲の他には、数本のデモテープを出しているみたいですが。

08.LIPSTICK GUYS / U.K. JUNK STYLE
作詞・作曲:MAU 編曲:LIPSTICK GUYS

マゾヒステリアと同じく、当時のアナーキストレコードからの参加バンド。
速弾きも交え、当時のインディーズとしては結構な爆音で突っ走る荒々しい楽曲なのですが、前2バンドの後、という位置だとちょっと粗い印象になるのが勿体ない気もします。その粗い部分含めて、バンドの色は申し分なく伝えられていたのではないかと思うのですけれども。

09.AFTER IMAGE / AFTER IMAGE
作詞:RAYKA 作曲:HIRON 編曲:AFTER IMAGE

前年に出したミニアルバム『黒い結晶』収録曲のリメイクバージョン。これ目的に、本オムニバスを手に取ったのでした。
元々クラシカルでクサいメロディーがてんこ盛りの楽曲なのですが、キーボード主体のクラシカルなイントロが追加され、疾走パートに入った際の印象を更に強めており、クサさにおいて「やり過ぎ」の概念は存在しない事を改めて思い知らされます。終盤にも、一度アカペラに入ってから再度盛り上げるパートが追加されており、全体に展開を増やしています。
現在Moi dix Moisで活動するSEIJI(Seth)のボーカルは、現在のバリトン寄りに比べるとまだまだ若い……というか青い印象がありますが、ミニアルバムに比べると雰囲気に合ってきたのも好印象。

10.SCARE CROW / 枳殻という家
作詞:いずみ 作曲、編曲:SCARE CROW 文:蜂須賀巧未

うねるような軽快なリズムとループするアコギを基板に、壮大な雰囲気のソロを弾くギターと、少し引っ込んだ所で歌い上げるボーカルによって、徐々に盛り上げを見せる展開を見せます。しかし、2分半程でそれが不意に途切れ、空間系のシンセと時折入る琴の音で構成された、和風アンビエントとも言えそうな、凛としながらも荒涼としたイメージが想起されてしまうパートが4分続くという構成の楽曲。クレジットに作詞と分けて「文」とありますが、こちらの内容が、ごく小さなボリュームで終盤に朗読されています。
ここまでのバンドとは全く違う位置にある印象の(どちらが良い悪いという事ではないですよ)、何度聴き返しても不思議な感覚に陥る楽曲で、本当に印象深いバンドとなりました。
単独音源が尽くレア化しており、私自身もこれ以外聴けていないですが、本作は安価で手に入れ易いので気になる方は是非。

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後ろ2組が頭抜けて好みですが、改めて振り返るとZEDEKIAHも面白そうだなぁと今更ながら。
AFTER IMAGEに関しては、後身バンドのAMADEUS含めて、Lacroix Despheresへの影響がそこここにあると思うので、そちらのファンの方も……というステマ。

試聴あり
"Cry-Max Pleasure Super〜Loud,Trance and Violence fo""Cry-Max Pleasure Super〜Loud,Trance and Violence fo"
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