ある意味バンド本体よりも思い入れがあるかもしれない、SPEED-iDのボーカリスト優朗によるソロ「UNHOLY」3部作。当時所属しサウンドプロデューサーも務めていたKEY PARTYから、1997年から99年にかけて1作ずつ発表されましたが、タイトル通り(?)2作目と3作目はクリスマスにリリースされました。

ソロということで、サンプリングを含めた演奏のほぼ全てを優朗さん一人で手がけており、ソロ1作目と同年にリリースされた、SPEED-iDの2作のアルバム同様打ち込み色が強く、インダストリアルロックをメインにゴシックロック・トリップホップ・サイケなどこれまでのバンドで培ってきた要素の混合物といった趣もあるのですが、クールながら明るい雰囲気も含んでいたi-D THE MAS/DOS EDITIONとは対照的に、こちらは全作通してダークで陰鬱なムードが漂っている印象があります。

それは本シリーズを通したテーマが「殺人」であり、その殆どが実際に起こった事件を下敷きにしていることと無関係ではないでしょう。iDでも「MAD HOUSE FREAKS」(宮崎勤)や「冷血」(アメリカの殺人事件を取材したカポーティのノンフィクション小説)など現実の事件から作られた楽曲はありましたが、ここまで徹底してくるとは。そんな世界観を音楽作品として提示されれば、中二病末期だった私としてはそりゃ興味持ってしまうわけで。
題材としては、これ以前にも繰り返し映画・小説等の元ネタとなってきた、古典的なメジャーどころ(と言って良いのか分からないけれど)から、リリース時点で犯人逮捕から何年も経っていないようなものまで、国内海外問わず集めています。
(主に殺人犯の視点での)ナレーションも其処此処に挿入されており、これと前後して知ったSound Horizonとはある意味で真裏に位置する「物語音楽」と言えるかもしれません。

後に『UNHOLY』『〜2』収録曲の大半が、iDのアルバム『UNHOLY NIGHT』(1999)で英詩でリメイクされるのですが、粗っぽい部分もありながら世界観がストレートに入ってくるこちらも甲乙付けがたく。


『UNHOLY』(1997)
unholy

UNHOLYUNHOLY
優朗

インディペンデントレーベル 1997-11-25
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01. 冷血 pt.2
02. ヘンリー・リー
03. 獣は氷の夢を見る
04. 祈る男
05. UNHOLY
06. アリス
07. ピエロが五人〜acoustic

全曲作詞・作曲・編曲:EURO
発売日:1997/11/25
品番:JI-T001


後の2作に比べ、全体に音が潰れすぎな印象がありますが、他のKEY PARTY所属バンドのイメージから大きく離れた、地に足の着いた残酷な世界観はこの時点で提示されている印象があります。
津山事件をベースにした陰鬱なバラード「冷血 pt.2」、大量殺人犯の生い立ちを綴った攻撃的な「ヘンリー・リー」、マスドスの温度を更に下げたような「獣は氷の夢を見る」「祈る男」、シリーズのテーマソングとも言えるロックナンバー「UNHOLY」、「MAD HOUSE FREAKS」に続いて宮崎勤をテーマとした、ノイジーなギターが前に出たポップでロマンチックな「アリス」が収録。
ラストの「ピエロが五人」は、マスエディション収録曲のリメイクバージョンで、アコギとピアノがメインとなりオリジナルより弾き語り色が強めとなりました。歌詞もしっかり載っていますが、少しiD版とは表現が異なる部分があったり。


『UNHOLY2』(1998)
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01. EVIL MOON RISING
02. BLACK OUT RIPPER 〜灯火管制下の殺人鬼
03. 悪魔の庭 〜親愛なるローズ・マリー
04. QUEER
05. 黒いダリア
06. デュッセルドルフの吸血鬼

全曲作詞・作曲・編曲:HENRY LEE EURO
発売日:1998/12/25
品番:JI-T007


3作中最も好みなのがこちら。
この並びで何度かリメイクされる、硬質な疾走曲「EVIL MOON RISING〜BLACK OUT RIPPER」の流れは何度聴いてもテンションが上ります。それぞれエド・ゲイン、ゴードン・カミンズがテーマ。
フレデリック・ウェストと妻ローズマリーによる(彼らなりの)愛を歌い上げるダウナーなバラード「悪魔の庭」、カオス極まるバックに、合っているのかいないのか判別し難いポップなメロディーが乗る「QUEER」、打ち込みを交えつつ基本弾き語りによるシンプルな「黒いダリア」と続き、ラストの「デュッセルドルフの吸血鬼」は、ナレーションをメインにしつつ徐々に激しさを露わにしてゆく、圧迫を感じる10分間を強いられます。


『UNHOLY3』(1999)
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01. 深海魚
02. Combat Red

<ジェフリー・ダーマーについて>
03. スティーヴン・ヒックス
04. オックスフォードアパート213号
05. 謝肉祭

06. The Cannival Method
07. 若き英雄の唄 Molodaya Gvardiya

全曲作詞・作曲・編曲:HENRY LEE EURO
発売日:1999/12/25
品番:JI-T009


こちらは更にインダストリアル色を強めた3作目のテーマは「食人」。本作は『UNHOLY NIGHT』の後にリリースされましたが、SPEED-iD活動再開後にライブで披露されているので、実質リメイクされていると言えるかもしれません。

アルバート・フィッシュが実際に送った手紙をベースにナレーションと低音ボイスによるサビを交互に繰り返す「深海魚」、叩きつけるような打ち込みリズムを前に出したスリリングな「Combat Red」の流れが好み。
03〜05はまとめてジェフリー・ダーマーがテーマ。ピアノのフレーズが印象的なワルツ調の「スティーブン・ヒックス」、ポップ寄りの「オックスフォードアパート213号」、SE含め陰惨な画を想像してしまうドロドロとした「謝肉祭」という流れとなっています。
シンセの使い方にドスマス期を彷彿とさせる「The Cannival Method」を経て、旧ソ連末期に起こった連続殺人事件を下敷きにしたラストの「若き英雄の唄」は、ドス黒い力強さで迫ってくるようなミドルチューン。

***

一応番外編の筈なのに、書くのに一番時間かけた気がする……(苦笑
『UNHOLY NIGHT』が国内で再発された現在、ソロの方が手に入れにくくなってしまっていますが、運良く見つけられたら是非一聴を。