Sound Horizon『Elysion〜楽園幻想物語組曲〜』(2005)

01.エルの楽園 [→ side:E →]
02.Ark
03.エルの絵本 [魔女とラフレンツェ]
04.Baroque
05.エルの肖像
06.Yield
07.エルの天秤
08.Sacrifice
09.エルの絵本 [笛吹き男とパレード]
10.Stardust
11.エルの楽園 [→ side:A →]
44.(シークレットトラック)

全曲作詞・作曲・編曲:Revo

CD-Extra:Extra Bonus Track
Elysion システムサウンド集
・起動音
・終了音
・ゴミ箱空音
・メール受信音
・エラー音

Members
Lyrics、Compose、Arrangement、Guitar、Keyboards、etc...:Revo
Vocal、Chorus、Narration、Voices:Aramary

発売日:2005/04/13
品番:BZCS 5006


***

4th Story CDと銘打たれた、Sound Horizonのメジャー2ndアルバム。ボーカリストAramaryが在籍した最後のCDとなり、本作までが第一期と呼ばれていたりもします。
自主制作時代でも多くのゲストミュージシャン、ボーカリストが参加していましたが、本作でも、過去作より引き続き参加しているJimang(Vocal、Voice)に加え、個人的にal.ni.co等のサポートで耳にしていた南都亮二(Drum)、現在に至るまで多くのRevo関連作品に参加している斉藤"Jake"慎吾(Guitar)ら多くのサポート陣が名を連ねています。

物語音楽としての作りは、「エルの○○」とタイトルが付けられた一連のシリーズと、独立しているように見える英語タイトル曲が交互に配置されており、積極的に時系列を明示しない形ながらも1つのストーリーが浮かび上がる構成となっている印象。デザイン面でもそれを意識しており、歌詞の表記の仕方や、ジャケ・裏ジャケにおけるイラストとアルバムタイトル表記のギミックなど、色々凝っています。
ポップに振れたものから語りオンリーのものまで曲調は幅広いのですが、全体的にヤンデレ病んだ内容のストーリーが主体である為、『Chronicle 2nd』や『Moira』のような歴史モノ寄りの世界観を期待するとちょっと戸惑うかもしれません。

01.エルの楽園 [→ side:E →]
イントロの速弾きギターを皮切りに、ピアノ・ストリングスを交え疾走するシンフォニックロックチューン。時折エフェクトも使用するシリアスなトーンで展開しつつ、サビに入ると明るくキャッチーなメロディーに入る展開が鮮やか。しかしながら、その切り替えやあらまりさん演じるエルの過剰なまでの可愛らしい歌い方によって(良い意味での)違和感・気持ち悪さを抱かせられ、サウンド面でも「楽園」への不穏な印象を持たせることに成功しているのではないかと思われます。

02.Ark
前作『Elysion -楽園への前奏曲-』(2004)収録曲の再録バージョン。
詳しい感想は『〜前奏曲』の記事に譲りますが、こちらは全体的にSEが増加し、ボーカルのエフェクトも増えた為、サイバーな色がより強まった印象。新たなギターソロパートも追加されています。

03.エルの絵本 [魔女とラフレンツェ]
アコギとアコーディオンが前に出た、変拍子を多用しプログレ要素を含みながらも軽快に展開するポップチューン。イントロのクサい笛のフレーズや、ストリングスによる優雅な間奏が印象的です。サビでは疾走アレンジになり、やはりキャッチーな歌メロを堪能できますが、ところどころ高音が苦しそうなのが気になるかも。
因みに、登場人物であるラフレンツェやオルドローズに関わると思われる楽曲が『Marchen』(2010)に収録されています。

04.Baroque
物悲しい旋律のチェンバロをバックに、教会での懺悔を思わせるナレーションをメインとしたトラック。
ナレーションが特徴の1つであるSHの楽曲ですが、4分半というそれなりの長さで、語り「のみ」というのは逆に珍しいような。
単体としてのインパクトは弱めですが、終盤、コーラスが挿入される展開に冷たい盛り上がりを感じさせられます。

05.エルの肖像
哀愁のあるオーボエをイントロに、ピアノをバックにした物静かなバラードから始まり、ストリングスが追加され徐々に盛り上がる前半パートから、バンドサウンドをメインに疾走する後半パートで構成されたメロディアスチューン。
本作のストーリーが無限にループしていると思わせる描写が、比較的分かりやすく示されている楽曲という印象ですが、同時にその始まりにも位置付けやすいのかなと、少年時代のアビスがメインに描かれていることから伺えます。実際、ライブDVDではこの曲がオープニングに据えられていたりしますし。
ナレーションを交えた前半から後半への盛り上がりが個人的にかなり燃えるのに加え、疾走するサビメロのキャッチーさ、フルートにより繰り返されるクサいフレーズなどツボを突かれる所が多く、エル(楽園)サイドでは一番好みの楽曲になるかもしれません。

06.Yield
「Ark」同様、『〜前奏曲』収録曲の再録バージョン。
こちらもSEが増加しているほか、フェードアウトだったアウトロが、アカペラとSEで〆るという違いがあります。

07.エルの天秤
スカを基調としたスリリングなリズムと、色気あるボーカルと憂いを含んだ優雅さを交えたメロディーが映える、軽快なポップチューン。ここでも流麗なフルートソロが印象的。
ライブでは執拗なまでに反復され大盛り上がりし、後の楽曲でもネタにされる、アビスの「残念だったねェ」ですが、音源ではそのフルートソロ前のブレイクに1回出てくるのみなので、制作側としては予想外の所がウケたという感じだったのかな?
全体的にテンポ良く展開し、終盤に向かうに連れテンポもアップしますが、ストーリー面でも連動するように動きが大きい楽曲なので、その辺を重視する人にも面白いのではないでしょうか。
また、この曲に登場するとある人物のその後が、次作『Roman』(2006)の1曲で描かれていたりします。

08.Sacrifice
イントロを始め反復される、厳かでダークなコーラスが印象的なミドルバラード。
全体的にヤンデレヒロイン率が高い本作ですが、この曲は少し違う位置にある印象があります。デリケートなところなので明言は避けますが、主人公の妹が「神に愛されたから 生まれつき幸福」とされ、その自覚ないままに**させられているというのは、つまりそういうことなのでしょうね。
アコギとピアノをバックに、脆くも凛とした印象を持つボーカルをメインとした前半から、徐々に音数を増やし盛り上げる中盤以降のアレンジによって、ストーリーに聴き手を引き込む演出として作用していると思われます。

09.エルの絵本 [笛吹き男とパレード]
笛のフレーズやコーラスを始めする、ちょっとレトロな旋律の中毒性が半端ない、ノリの良い行進曲調の楽曲。
正にパレードを思わせるような賑やかな雰囲気や、度々挿入されるアビスの怪しさ爆発なナレーション、英語タイトルとの関連を思わせるナレーションを交えたスパニッシュな雰囲気の間奏、これまたクサいフルートソロなど色々てんこ盛りで、ストーリー面を抜きに単純に聴いていても楽しい楽曲となっています。
ライブDVDにおける、前述の「残念だったねェ」ラッシュはこの曲で行われています。

10.Stardust
前作の「恋人を射ち堕とした日」を彷彿とさせる、キラキラとしたシンセと打ち込みリズムが印象的な、SHのポップサイドを象徴するようなダンサブルなアップテンポナンバー。
それこそアニメのタイアップが付いていてもおかしくないような、繰り返されるキャッチーなサビと哀愁ある大サビの盛り上がり、単曲でも飲み込みやすいストーリー(「何故なのよォォォォ!」がネタっぽく聴こえるのは人それぞれ……だと思う)など、楽曲面・物語面共に分かり易い楽曲となっているのではないでしょうか。
あと、今回聴き返してみて、意外と音数はシンプルなのだなぁと気付かされたり。

11.エルの楽園 [→ side:A →]
鳥の囀りを交えたストリングスをメインに、子供のようなあらまりさんのボーカルがメインをとるのんびりとした展開から一転、シリアスに歌い上げるダークな雰囲気のバラードに。その豹変による印象も勿論強いのですが、個人的にはその前半における、エルが過剰な白さを演出することによって、却って裏が透けて見えるようなゾワゾワ感もかなりのものだと思っています。
アウトロには、同じく「エルの肖像」アウトロに使われていた旋律がスローなアレンジになって使われています。



44.(シークレットトラック)
しばらく無音トラックが続く中、突如再生されるトラック。
エルとアビスによる会話の後、「エルの楽園[→side:E]→」イントロと同じ旋律のバイオリンをバックにしたナレーションが入ります。最後に途切れたナレーションの答えは聴き手側が考えてね、という事でしょうか。この後無音トラックがもう1つあるのを考えると、「真実の名」というのは死後(45)の世界なのかな? と個人的に思っていたりするのですが。


・Elysion システムサウンド集
PC上で再生できるシステムボイスWAV音源集。
クロセカと同様、アルバム中のセリフをパロったナレーションが収められています。

***

ダークな世界観とキャッチーな歌メロ等から、聴いた当時から、V系スキーにとって入り易いかもと思っているアルバム。個人的には、某悪意と悲劇バンドの某マーベラスに近い構成・世界観だと思っているのですが。
冒頭で、人によっては戸惑うかもと書きましたが、後の音源のような1曲あたりの長尺化はまだ起こっておらず、セリフの挿入を除けば、所謂一般的なポップスの構成を持つものが殆どなので、楽曲自体は割りと取っ付き易いのかなと思っています。


試聴あり
Elysion~楽園幻想物語組曲~Elysion~楽園幻想物語組曲~
Revo Sound Horizon

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