emmuree『EMMUREE』(2012)

01. birth -煌めき破裂-
02. ラヴリィ
03. 未来永劫、雁字搦め。
04. butterfly
05. ボロボロの手紙
06. ラブロマンス
07. from hell to hell
08. Christmas Eve に生まれた古時計
09. 真っ赤な林檎
10. 花壇

全曲作詞:想
作曲 01、03、04、08、09:ハルカ / 02、05〜07、10:想

発売日:2012/11/14
品番:GNR-002

Members
Vocal、Cover Illust & Design:想
Guitar:ハルカ
Bass、Art Work:朋
Drums:ゆき


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2012年にリリースされたemmureeの3rdフルアルバム。会場・通販限定シングル曲「真っ赤な林檎」、2002年のオムニバスアルバム『HYSTERIC MEDIA ZONE』参加曲「ラブロマンス」がそれぞれ再録されています。
同年には、再録を含むベスト盤ライブ盤がリリースされており、結果的に1年にアルバム3作という、アンミュレとしては怒涛の(怒涛なんですよ!)リリースペースの年となりました。

艶のあるボーカルと空間を漂うようなギターを中心としたバンドサウンド、という基本構成は過去作から一貫していますが、本作ではダークでメロディアスという要素に加え、変拍子を用いたカオスな印象を持たせる楽曲が目立ってきたような印象。
オープニングの「birth -煌めき破裂-」から、ゆったりと歌い上げるかと思えばファルセットと低音を絡めて爆走する展開におっと思わせられますが、その後の「未来永劫、雁字搦め。」、「butterfly」、「from hell to hell」などでも、ポップスの構成の中にプログレ的要素を感じさせる展開に耳を惹かれるものが多く、暗さ・激しさに加え、混沌とした印象を聴き手に持たせる事に成功しているように思えます。本作におけるこの手の楽曲は、ハルカによるものなので、丁度そういうモードだったのかも。
特に、展開の多いリズムをバックにリーディングの領域に入ったように捲し立てたかと思えば、サビでは急にミドルテンポとなり、儚げな白さを感じさせるメロディーを歌い上げる「butterfly」は、本作を象徴するような1曲となっているのではないでしょうか。

対して、ベスト盤で感じたポップな色を感じさせる楽曲も主張しているのが本作の面白いところ。
ダンサブルなリズムと妖艶なメロディーが印象的な、偏執的ラブソング「ラヴリィ」、ノイジーなギターをメインに、前にも述べた儚げなメロディーが映えるバラード「ボロボロの手紙」、世代間の家族愛がテーマ(!)のクリスマスソングながら、ギターのフレーズは何故か中華風のポップチューン「Christmas Eve に生まれた古時計」など、アルバムの色を広げる佳曲が揃っています。個人的に「Christmas Eve〜」は、聴く度にほっこりする(笑
過去曲では、10年振りに再録された「ラブロマンス」と、当時の直近シングル「真っ赤な林檎」とが同居して違和感無いのが面白い。前者が初期BUCK-TICKを思わせる乾いた薄暗いアレンジのミドルチューン(『惡の華』に入っていそう)、後者がジットリと沈んだ雰囲気のバラードですが、10年経つ中でブレない軸のような部分がこの辺りになっている、のかもしれません。
ラストの『花壇』は、白さを突き詰めたような暖かいミドルバラードで、聴き手に向けたような印象の平易な歌詞と合わせて、穏やかな後味でアルバムを〆られた心地にさせられます。

ベスト盤などで興味を持った層を引き込みつつ、カオティックな様相も新たに見せ始めた作品で、全体に幅が広がった、というより両極端になったという印象のアルバム。
ダーク且つメロディアスな楽曲がメインの前作『灯陰』(2010)もお勧めなのですが、前後の音源に比べ音が引っ込み気味、次作『窓の外は、カァニバル。』(2015)は、その変拍子を用いた方向を更に進めた印象の作品ということもあり、現時点では本作を起点にして広げていくのが良いかもしれません。

EMMUREEEMMUREE
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