Sound Horizon『Roman』(2006)

01. 朝と夜の物語
02. 焔
03. 見えざる腕
04. 呪われし宝石
05. 星屑の革紐
06. 緋色の風車
07. 天使の彫像
08. 美しきもの
09. 歓びと哀しみの葡萄酒
10. 黄昏の賢者
11. 11文字の伝言

全曲作詞・作曲・編曲:Revo

発売日:2006/11/22
品番:KICS-91286

Sound Producer、Computer Programming & Keyboards:Revo

Lead Vocals(01):Hiver Laurant
Lead Vocals(02、11)、Chorus:RIKKI
Lead Vocals(03、06)、Chorus:KAORI
Lead Vocals(04、09)、Chorus:REMI
Lead Vocals(05):Azumi Inoue
Lead Vocals(05、08)、Chorus:YUUKI
Lead Vocals(07、10)、Voices(01、06、09、10)、Chorus:Jimang
Voices(01、03、05):Akio Otsuka
Voices(04、07、11):Rica Fukami (Vi-vo)
Voices(01、11):Ike Nelson
Voices(01、03、05、07、09、11):Mamiko Noto
Voices(03、08):Nobuo Tobita
Voices(02〜04、10):Norio Wakamoto
Voices(04、06、07):yukana
Voices(08):Yuuko Minaguchi
Voices(01、04):Hikaru Midorikawa
Voices(01、02、04、06、08、10):Yukari Tamura
Voices(03、10):Sublime
Voices(03、04):Soichiro Hoshi
Voices(10、11):Noriko Hidaka
Guitars:Shingo Jake Saito
Keyboards、A Piano(04、09):Kyoko Osako
Bass:Atsushi Hasegawa
Drums:Kenichi Fujimoto
Percussions:Naomi Ishikawa
Harp(04、07):Tomonori Asakawa
A Piano(01、11):Kenichiro Senzawa
Flute(03、07):Ryo Sakagami
Harmonica(08):Horofumi Mizuno
Oboe(07):Hiroshi Shibayama
Clarinet(07):Tadashi Hoshino
Fagotto(07):Jun Fujita
Mandrin(09)、Balalaika(09):Hideki Wachi
Sax(05):Watanabe Fire
Solo Violin(02、06):Kana
Strings(03、07、10、11):Kana Strings
 (Vln1st:Kana Ito、Ado Matsumoto、Izumi Hisanaga、Kazuo Watanabe、Makkko Uriuda、Michiko Miura)
 (Vln2nd:Emiko Hagino、Makiko Yamamoto、Makoto Motoi、Miyako Tubuku、Nagisa Kiriyama、Noriyo Odayashi、Yuki Sato、Yuko Okubo)
 (Vla:Kaoru Hagiwara、Miho Kisanuki、Rieko Kouno)
 (Vc:Makoto Osawa、Shinobu Hashimoto、Toshihiko Tsuchida)
Strings(01、04、05、09):Gen Ittestu Strings
 (Vln1st:Gen Ittetsu、Maki Nagata、Yuko Kazitani、Jun Takeuchi、Daisuke Kadowaki)
 (Vln2dn:Takuya Mori、Yoshiko Kaneko、Yayoi Fujita、Takao Ochiai)
 (Vla:Yuuko Kajitani、Syouko Miki)
 (Vc:Kaori Morita、Tomoki Iwanaga)
Sound Effect:Hirokazu Ebisu(Walla-Works,Inc.)


***

5th story CDと銘打たれた、Revo率いるSound Horizonのメジャー3rdアルバム。初回限定盤には、紙製ボックスケースとメッセージ入りのハンカチが付いていました(CDの収録内容は同一)。
同年に先行してリリースされたシングル『少年は剣を…』でもみられた、演奏・歌唱・ナレーションに多くのサポート陣が参加する体制が確立した作品であり、本作を機に物語音楽としての情報量もグッと上がった印象があります。これより前は、ボーカルパート中に台詞が入ることはあまりなかったのですが、このアルバム以降、ストーリー進行に合わせて遠慮無く入っていくようになったことも、原因の1つに挙げられるかもしれません(このアルバム自体は、所謂ポップスの構成を守っている曲が多く、物語の進行に合わせて展開がコロコロ変わる曲が増えるのは、これより後の印象ですが)。

以下、各曲の感想と一緒に、他の作品を含めたストーリーの方にも多少触れています。ただ、本作のストーリー面に関しては、現時点でも咀嚼しきれておらず、執筆時点(2017/08)で各種書籍版も未読のため、変な事言っていたらご勘弁を(寧ろ教えて頂ければ……)。あと盲目長文注意。

01. 朝と夜の物語
『少年は剣を…』に収録されている、シークレットトラックの旋律をサビメロに据えたポップロックチューン。
シングルの時点では気付かなかった、そのメロディーの即効性に驚かされた覚えがあり、力強いナレーションや、クラシカルさが顔を出すギター・キーボードによるプログレ寄りの間奏と合わせて、オープニングとしてのインパクトと、2期SHの方向性を示す分かりやすさを持つ楽曲と言えるでしょう。
メインボーカルとしてクレジットされている、Hiver Laurantの中の人はRevoさん。本作以降、色々なキャラクターを演じていきますが、この時点の歌唱力に関しては、スタジオ音源でこれは正直厳しいなぁという印象。楽曲自体は、それこそ2期お披露目曲としてシングルで切られていてもおかしくない力があるだけに(実際、ライブでは2期始動時のアンセムのような位置付けになっていました)、態々ボーカルを執る必然性が薄く感じられるのがちょっと残念……と思っていたら、2015年の『Nein』で相当強い、というか替えの利かない「必然性」が付けられたのでした。策士!

歌詞内容は、本作のあらすじや基本設定を説明していくもの。今振り返ると、本曲で出てきたキーワード・比喩が、この後のシングル・アルバムに適用されているケースが非常に多い事に驚かされます。

02. 焔
バイオリンによる哀愁あるキャッチーな旋律と、若本規夫のナレーションに強烈な印象を受ける疾走曲。歌詞に関しては、母視点によるHiverの生い立ち(敢えてこういう言い方をします)と、ジャケットにも描かれている双子の人形がテーマと思われるもの。
メインボーカルのRIKKIによる、サビに限らず切なさと強さを持った歌メロにもツボを押されます。
また、『Nein』収録のある曲の存在によって、元々好みだった本曲が、10年近く経ち更に株を上げることになりました。

03. 見えざる腕
優雅なフレンチポップ風のアレンジで幕を開けたかと思いきや、ストーリー進行に合わせテンポを上げ、スカ調になったりビートロック寄りの展開になったりと、本作より後のSHを予見するような、歌劇色の強いナンバー。その中でも全体を通して前に出ているフルートが、本曲の芯として機能している印象です。メインボーカルはKAORI。
アルバムテーマ曲と言える「朝と夜の物語」ではなく、この曲でMVが撮られているのも、その後のSHの楽曲傾向が既に見据えられていたのかも、と思うのは穿ち過ぎでしょうか。あるいはこの時点でRevoさんのボーカル曲をメインに宣伝するのはリスキーとの判断があったのk(ry この後のMVでは、基本的に中の人:Revoのキャラクターの出る曲が選ばれています)

04. 呪われし宝石
イントロでの女性の高笑いが印象的な、シンフォニックアレンジのスローナンバー。サビパート以降ではアップテンポな展開になりますが、そこまでの抑えたアレンジや、メインボーカル:REMIによるオペラティックな歌唱もあり、全体に不穏な雰囲気を持ち進行する印象を受けます。
楽曲としては、本作中において大きく好きにも嫌いにも振れず、と言った位置になりますが、物語面でみると特に情報量が多いのがこちら。「檻の中の花」(『Elysion -楽園への前奏曲-』(2004)』収録)に出てきたミシェルとの関連が匂わされたり、「朝と夜の物語」で死亡が明言されているキャラクターが普通に登場したりと、深読みのしがいがあるのが面白いやらもどかしいやら。歌うとRevo、喋ると緑川光って今思うと色々と凄い
ミシェルに関しては、この後出た『ヴァニシング・スターライト』(2014)と『Nein』により更に話が広がっているので、興味のある方は。

05. 星屑の革紐
きらびやかなアレンジのシンセが特徴的な、切なさと爽やかさを併せ持つポップチューン。メインボーカルはYUUKIですが、序盤と後半に登場する井上あずみも美味しい所を担当している印象です(メロディー的にも演じるキャラ的にも)。中盤のナレーションが乗ったサックスソロも、その爽やかさをもうひと押し、といった感じ。
単曲のストーリーとしては、ジュブナイル色が強いというか、ファンタジー要素を交えた主人公の成長譚と言うことも出来ますが、『Elysion -楽園への前奏曲-』内の某曲との関連が明らかになる終盤の展開を考えると、熱くもあり不穏でもありといった印象(ある意味『Nein』の作風を先取りしたとも言える)。個人的に、その曲のメロディーが挿入され一気に盛り上がる展開が鳥肌モノということもあり、本作中において一番好みに入った楽曲となっています。

06. 緋色の風車
シングル『少年は剣を…』収録曲のアルバムバージョン。
イントロや間奏でのバイオリンソロの追加、ラストのサビ前にナレーション追加、シングル版で英語詞だった部分が全てフランス語になるなどの変更がされています(本作の歌詞は、基本的に日本語かフランス語)。
歌詞と言えば、結構具体的な描写が多いのにも関わらず、アルバム内でどんな位置にあるのか意外と分からない曲だったりも(コミカライズ版では、「見えざる腕」へ繋がる話になっているようです)。チラッと検索する限り、自主制作時代の曲とも関連があるようですが、いかんせん手元にないので詳細は別の方に委ねます。

07. 天使の彫像
管楽器の柔らかいアレンジをメインとしたスローバラード。メインボーカルはじまんぐ。
彼のボーカル(というかキャラクター)は、どこかコミカルさや胡散臭さが出る傾向がある気がしますが、本曲では、明るいとはいえない過去を持つ老人を演じており、物悲しくも凛としたメロディーを切々と歌い上げる展開も相まって、熱く来るものがあります。ストーリーも良く言えば王道、悪くいうとベタなお涙頂戴モノという印象もありますが、この曲に関してはそれで良い、それが良いと思いたい。単体で話が成立している(≒他作品の予備知識ゼロでも飲み込みやすい)のって、本作ではこの曲位な気もしますし(「黄昏の賢者」も色々と分かりやすいですが、あちらは「釣り針」も多いので)。

08. 美しきもの
YUUKIさんのボーカルとハーモニカによる、切ないサビメロが印象的なミドルポップナンバー。長尺で濃口なアレンジのバラードが多いアルバム後半において、そのハーモニカとアコギが前に出たアレンジには、良い意味で軽さがあり、終盤テンポアップする展開と併せて清涼感の感じられる1曲。
本作に限らず固有名詞が多く使われるSHですが、この曲に関しては抽象的な物言いがメインで、ストーリー面が前面には出てこない印象があります。ただ、こちらも自主制作時代の作品とリンクがあるとのことで、多分に片手落ちな聴き方しかできていないのでしょうが、いかんせんモノが手元にry

09. 歓びと哀しみの葡萄酒
穏やかなアレンジの前半・後半部に、ダークな盛り上がりを見せる中盤パートが挟まれたバラード。
前述した、濃口バラード路線の頂点のような楽曲で、終盤の配置ということもあり、人によってはこの辺りで聴き疲れしてしまうかもしれません。その中盤の転調パートを筆頭に、REMIさんのソプラノボーカルが堪能できるので、その辺を求める人には待ってました的な楽曲となるのではないでしょうか。
ストーリー面では、『Elysion〜楽園幻想物語組曲〜』(2005)に収録されている、「エルの天秤」の前日譚及び後日談という形を取っており、本曲の主人公:Loraine視点で見た「エルの天秤」に触れられるのは興味深いものがあります。そしてここでもミシェルの影が。

10. 黄昏の賢者
落ち着いた音色のキーボードによるイントロから一転、軽快なベースと、明るくキャッチーなストリングスが前に出るダンサブルナンバー。
この曲に関しては、ずっとメインボーカルじまんぐ氏のターンというか、良い意味で「天使の彫像」とは真逆なベクトルの、怪しさとユーモラスさが炸裂。そのサビに限らないメロディーの即効性・アレンジと併せて、ライブでの盛り上げを大いに助ける役割を負うことになったのではないかと。

歌詞内容については、ざっくり言うと「賢者おじさんのお悩み相談室(屋外)」なのですが、アルバム各曲のキーワードのみならず、曲順に関する言葉やSHの過去作を連想させる言葉があちこちに出てきており、ファンサービス以上のメタ視点を持っている節があるのが気になります。これも今思えば、『ヴァニシング〜』・『Nein』での、登場人物側による、物語へメタ視点で介入する展開を先取りしていたのかもしれません。そして最後の最後に出る「賢者の名前」……また「檻の中の花」じゃないか!

11. 11文字の伝言
ストリングスとピアノをメインにした、壮大なスローバラード。構成自体は本作中でも特にシンプルというか、とにかく言葉(台詞含む)とメロディーを聴かせる事に注力した印象です。
色々とぼかされているものの、母視点の歌詞で歌い上げていることもあり(内容を読む限り、一人だけの視点ではなく、本作中に登場する「母」を包括的に歌ったものかと思われる)、ボーカルを務めるRIKKIさんは、この曲でSHのお母さん的な扱いになった気がします。
アウトロが唐突に切られていますが、これは切られた部分が直接1曲目のイントロに繋がる、アルバム内でループする演出となっているため。

***

後半の長尺バラードの多さもあり、曲が進むに連れ勢いが落ち着いていく印象は否めませんが、後の作品に比べ1曲1曲の構成は比較的取っ付きやすく(ポップス的構成という意味で)、しかし他作品との繋がりを前提にしたものが多いストーリー面の敷居は高め、という位置にある作品になるでしょうか。そういう意味では、本作以上に他作品の予備知識が要求された『Nein』は、楽曲面でまったりし過ぎないように作られていたのかもと気付かされたり。
ここはあくまで私個人の好みの問題ですので、逆にRevo曲には壮大なバラードを! という人には右肩上がりな構成のアルバムになると思います。

当時どの程度、後のStory CD作品の構想があったのかは分かりませんが、本作については設定面・物語面において、意図的に歯抜けの部分を作っていたことが分かってきたのも、面白くもあり恐ろしくもあり。この先回収される伏線、(後付け設定含めても)まだ結構あるんだろうなぁ。
そういった意味では、新しい音源から遡る人程楽しめるというか、それこそ葡萄酒のように時間を置かれることで旨味が増していく作品と言えるのではないでしょうか。


試聴あり
5th story CD「Roman」
Sound Horizon
KINGRECORDS.CO.,LTD(K)(M)
2006-11-22


5th story CD「Roman」(初回限定盤)
Sound Horizon
キングレコード
2006-11-22











truemessage
アルバムリリース当時、ブックレットに記載されているURLにて(現在サイトは消滅)、ある言葉を入力してダウンロードできたボーナストラック。ブックレットに散見される歌詞内の「数字」と、アルバムのある場所に示されている対応表を使い、答えを出す形になっていました、
こちらは、「11文字の伝言」のある箇所の歌詞が異なるバージョンとなっており、歌詞上での順番がそのまま答えになっていたため、殆どの人は最初にこちらを聴いたのではないでしょうか。

yaneuraroman
同URLで違う答えを入力するとダウンロードできた、もう1つのボーナストラック。
こちらは完全な未収録曲で、じまんぐさんを中心とした声優陣の意味深なナレーションが乗った、ダークな色を纏ったジャジーな楽曲。こちらはtrumessageに比べ、答えを出すのに手間取った覚えがあります(「黄昏の賢者」の歌詞内における、あるパートでの順番がヒントになっていました)。
この曲の主旋律が、『Nein』内の「西洋骨董・屋根裏堂」にも使われています(大本としては、自主制作期の楽曲「檻の中の遊戯」のメロディーが元ネタとのこと)。

前述の通り特設サイトが消えているため、現在この2曲はダウンロードが出来ませんが、ベストアルバム『Chronology [2005-2010]』(2012)にて、それぞれ「11文字の伝言 [Le vrai message]」、「屋根裏物語」と改題して収録されているので、興味のある方はそちらを。