rice『Genesis』(2015)

CD
01. Air-variation-
02. Fake star
03. Gleam
04. Plasma
05. Kagome
06. Scape[goat]
07. to you -Gospel ver.-
08. Tera
09. Never
10. Asterisk
11. STAY

全曲作詞:Yuki Sakurai
作曲 01〜07、09〜11:Yuki Sakurai / 08:rice
編曲 01、07:Yuki Sakurai / 02〜06、08〜11:rice

DVD
Fake star -Asterisk edtion- MV

発売日:2015/04/01
品番:yuro-042

Members
Vocal & Bass:Yuki Sakurai
Drums:Kazuhiro Murata

Player
Guitar (02〜06、08〜11):Masaomi"Ommy"Joishi
Cello (02、06、08、11):Toshihiko"@-chan"Nagayama
Violin (09、10):Kie"Kie-chan"Terashima
Read (01):Ryoko Shintani


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オリジナルとしては5作目となる、riceのフルアルバム(公式ではミニアルバムを含めているため、6thアルバムの扱い)。彼らに関しては、休止期間も含めフルアルバムは数年おき、というペースが続いていましたが、本作は前作『零-しずく-』(2014)から5ヶ月、それも大半が新曲か新録バージョンというハイペースでの発売となりました。

まず新鮮だった点として、初期から何度も再録されながらも、基本的に同じアレンジでアルバムの最後に配されてきた「Air」が1曲目に、しかも女声ナレーションを乗せたオルゴールアレンジになっていた事が挙げられるでしょうか。これまでもボーカル:櫻井有紀による、アルバムのテーマを歌詞を織り交ぜて示したセルフライナーはブックレット中にありましたが、今回のような使い方には、文字通りVariation(変化)を感じました。ここで出た「華弦の月」・「アスタリスク」が本作のキーワードとして使われていく事になります。

実質的な1曲目に当たる「Fake star」、続く「Gleam」と、切ない歌謡メロが映える疾走曲が連続するのにも驚かされる。riceにも普通に疾走曲はありますが、近年は、所謂「いい曲」を衒いなく聴かせる路線を正面から推している印象もあったので(「ハナミズキ」をカバーする選択は、シーン全体からすればかなり珍しい気が)、青臭さを含んだ歌詞を含め、ここにきて青春メタル(?)のような勢いが出てきたのは面白い。
リメイクされた「to you」、「STAY」を除き、当時のシングルからの収録は、その「Fake star」だけでしたが、この曲は前作アルバムより前に出ていたにも関わらず未収録だったもの。意図的かそうでないかはさておき、結果的に星に関するテーマが多い本作へ収録されたのは正解だった気がします。

「Plasma」、「Kagome」は、主旋律は彼らの王道と言える和風なものながらも、アレンジはピコピコしたシンセを交えたラウドサウンドという、V系界隈としては王道となって久しいですが、riceとしてみるとこれまであまり無かったような路線。個人的には、「Kagome」における、開けたメロディーを歌い上げるサビと、どこか不穏な印象を受けるタイトルを連呼する大サビの対比が面白い。

バラードゾーンの中盤においては、オルガンを交えて切々と歌い上げる「Scape[goat]」、後半でコーラスが重なる壮大な「Tera」の間に、櫻井さんの一人多重アカペラでゴスペル調にリメイクされたシングル曲「to you -Gospel ver.-」が、流れに良い緩急を与えている印象です。

どちらも切ないメロディーを乗せながら、急ぎ気味に疾走する「Never」、王道バラードの「Asterisk」においては、「Air」で述べたキーワードを使ったメッセージ性の強い言葉運びとあいまって、終盤の盛り上げに寄与している感。この2曲は、後に両A面シングルとしてカットされており、後述の点でも本作における肝になっていると思われます。
ラストの「STAY」は、先にシングルカップリング曲としてアコースティックバージョンが出されていましたが、こちらではドラムとチェロで引っ張る、爽快感あるメロディーが映えるバンドアレンジに。前述の通り、これまでアルバムサイズの音源では「Air」で締めるのが恒例となっていたため、この勢いで突き抜けるような後味をriceで味わうことを新鮮に感じた人もいるのでは。


リリース時、既に活動14年を迎えながら、ここに来て更に脂が乗ってくるかというのが当時の印象。楽曲傾向という点では、柔らかいボーカルを活かした伸びやかなメロディーという長所は維持しつつ、勢いのある楽曲の割合や、曲順構成において大胆な変化が感じられる上、それが良い意味で聴き易さに繋がっており、シングルコレクション的な性格も強かった前作・前前作よりも、現時点で1番入門に適したアルバムではないかと思っています。

また、ここまで敢えて書きませんでしたが、本作はメンバーが10代の頃に在籍していたRaphael、並びにリーダーであった故・華月との関連を直截に表現した曲が多く、本作のアレンジが、翌年に行なわれたRaphael再結成〜解散に伴う再録アルバムでもしばしば導入されるのも特徴(オルガン導入やゴスペル調アレンジなど)。「Kagome」における歌詞のギミックについては、ここまでやるかとも思いましたが、こういう形(作品・商品として昇華・相対化)に出来るようになったのは、中の人的にも良い事なんだろうと思っています。
特に「Never」(恐らく「Asterisk」も)は、『Love story -2000020220161101-』収録の新曲「Ending」、「Love Story」と、曲タイトルのみならず曲調でも親和性が高く、再結成で興味が再燃した層にも届きやすい作品になったのではないかと思われます。

Genesis
rice
Air`sRock/Timely Records
2015-04-01