ALI PROJECT『令嬢薔薇図鑑』(2013)
01. 令嬢薔薇図鑑
02. ローズ家の双子達
03. 隼の白バラ
04. 薔薇娼館
05. 朗読する女中と小さな令嬢
06. 少女と水蜜桃
07. 黒百合隠密カゲキダン
08. 南無地獄大菩薩
09. 見ぬ友へ
10. いにしへひとの言葉 (instrumental)
作詞 01〜09:ARIKA TAKARANO
全曲作曲:MIKIYA KATAKURA
ストリングスアレンジ 01、03、04、06、09:YOSHIHISA HIRANO
発売日:2013/09/11
品番:TKCU-73963
Members
VOCALS:ARIKA TAKARANO
PROCUCED、DIRECTED:MIKIYA KATAKURA
VIOLIN:TSUYOSHI WATANABE
VIOLIN:YU SUGINO
STRINGS:TSUYOSHI WATANABE STRINGS
***
ALI PROJECT13枚目のオリジナルアルバム。
ジャケット・ブックレットにおける写真では、ボーカル:宝野アリカがローズ姓
六姉妹(それぞれ名前が付記)に扮していたり、19世紀末制作のアンティークドールが用いられたりと、欧風寄りの楽曲が多い作品なのかと思わせられますが……。
序盤は、「令嬢薔薇図鑑」「ローズ家の双子達」と、2000年代以降のシングルタイトル曲を彷彿とさせる、ストリングスとデジタルサウンドによる疾走アレンジ+高音も交えたキャッチーなサビメロを全面に出した曲を続けて送り込む展開となっています。
特に「ローズ家の双子達」は、本作の少し前に出たアニメ主題歌シングル曲「私の薔薇を喰みなさい」の流れを汲む、可愛らしさと勇ましさを兼ねた楽曲。アルバムオープニングがシングル路線で――というのは恒例ですが、タイアップ曲経由で久々にアルバムを手に取った、という層にも入り易い流れになっているのではないでしょうか。
曲中での耽美なメロディーは一貫しながら、サビでの軽快なリズムが印象的なミドルポップナンバー「薔薇娼館」、チェンバロとストリングスによるメイン演奏楽器の交代が、歌詞上での場面転換と連動を感じさせる「朗読する女中と小さな令嬢」と、クラシック色を交えたゴスといった趣が前半は強目。
個人的に、ポップス的構成の中に執拗な変拍子や強烈なメロディーを入れることで、プログレ色を出すのがアリプロという印象があるので、「朗読する〜」のように構成自体を少し崩した展開はちょっと珍しい気もします。
ここから、アレンジ・歌詞両面で流れが大きく変わっていくのがアルバム後半。
昭和日本を思わせる言葉選びと、力強い歌メロを乗せ三拍子で展開するサビに凛とした印象を受ける「少女と水蜜桃」のような曲が、本作に入ってくるとは思っていなかったので、最初に聴いた際は驚かされた覚えがあります。
順番は前後しますが、日本軍の戦闘機とそのパイロットをテーマにした「隼の白バラ」も、題材は異なれど同路線の楽曲ながら(こちらもサビが三拍子)、タイトル通り「バラ」も表現に組み込まれているからか、こちらは振れ幅の一つとして割とすんなり入ってきた覚えが。ある意味で、後半戦の伏線としても組み込まれていて――と考えるのは穿ち過ぎでしょうか。
MVが作られており、本作のリードトラックになるのは「黒百合隠密カゲキダン」。
アッパーかつ執拗な変拍子によるアレンジ+和のエッセンス+大衆迎合的なものに分かり易く毒を吐く歌詞、という所で考えると、ゼロ年代後半辺りからの王道はこちらになって来るのかな?
前作『贋作師』(2012)の感想でも少し述べたように、年々こういうギラついた言葉が眩しくなってしまうのですが(厳密に言うと、この手の曲でディスられる側だということに気付いてくる)、何度も言うように、こればかりは作品と聴き手の相性・触れるタイミングの問題(宝野さんとしては「少女貴族」辺りから一貫しているテーマだと思う)。「敢えてアリプロ聴いている」層には、この上なく響く1曲になるかと思われます。
ここまで来ると、タイトル発表の時点で異彩を放っており、前曲以上にテンポチェンジ・変拍子祭りな「南無地獄大菩薩」も、後半の流れで切り取ると寧ろ自然に思えるので不思議。
この6〜8曲目に関しては、前作の延長線上という感もあります。
ボーカル曲としてはラストにあたる「見ぬ友へ」は、デジタルサウンドを噛ませながら、トルコっぽいメロディー・アレンジが前に出た、終盤に来てまた違った所に来た印象。勝手にジャンルを付けるなら……オスマンインダストリアル(?)。
これまた勝手な想像ですが、歌詞は前作収録「La verite」で描かれた主人公のその後、のような感じもあったり。
所謂ゴスロリ方面の優雅・耽美なアレンジで固め、「南無地獄大菩薩」が和風なアクセントとして入る位か――と思っていたら、蓋を開けてみればかなり幅が広くとられた印象の作品。
『令嬢薔薇図鑑』というタイトルやビジュアルイメージに沿った内容か、と聞かれると、後半になるに連れ逸脱していくのかな、という感じですが(「黒百合隠密カゲキダン」がMV曲というのを考えると、自分の持っていた前印象の方がズレていたのでしょうね)、アルバムとしては、楽曲間の緩急や全体の尺など併せて、変に聴きにくいという訳ではないので、その辺りの匙加減はやはりベテランの為せる業でしょうか。
前後のアルバムが、10年代のアリプロとして入り易い印象があるので、より入り込む為の次の一手、として本作をお勧めしたいと思います。
試聴あり
01. 令嬢薔薇図鑑
02. ローズ家の双子達
03. 隼の白バラ
04. 薔薇娼館
05. 朗読する女中と小さな令嬢
06. 少女と水蜜桃
07. 黒百合隠密カゲキダン
08. 南無地獄大菩薩
09. 見ぬ友へ
10. いにしへひとの言葉 (instrumental)
作詞 01〜09:ARIKA TAKARANO
全曲作曲:MIKIYA KATAKURA
ストリングスアレンジ 01、03、04、06、09:YOSHIHISA HIRANO
発売日:2013/09/11
品番:TKCU-73963
Members
VOCALS:ARIKA TAKARANO
PROCUCED、DIRECTED:MIKIYA KATAKURA
VIOLIN:TSUYOSHI WATANABE
VIOLIN:YU SUGINO
STRINGS:TSUYOSHI WATANABE STRINGS
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ALI PROJECT13枚目のオリジナルアルバム。
ジャケット・ブックレットにおける写真では、ボーカル:宝野アリカがローズ姓
六姉妹(それぞれ名前が付記)に扮していたり、19世紀末制作のアンティークドールが用いられたりと、欧風寄りの楽曲が多い作品なのかと思わせられますが……。
序盤は、「令嬢薔薇図鑑」「ローズ家の双子達」と、2000年代以降のシングルタイトル曲を彷彿とさせる、ストリングスとデジタルサウンドによる疾走アレンジ+高音も交えたキャッチーなサビメロを全面に出した曲を続けて送り込む展開となっています。
特に「ローズ家の双子達」は、本作の少し前に出たアニメ主題歌シングル曲「私の薔薇を喰みなさい」の流れを汲む、可愛らしさと勇ましさを兼ねた楽曲。アルバムオープニングがシングル路線で――というのは恒例ですが、タイアップ曲経由で久々にアルバムを手に取った、という層にも入り易い流れになっているのではないでしょうか。
曲中での耽美なメロディーは一貫しながら、サビでの軽快なリズムが印象的なミドルポップナンバー「薔薇娼館」、チェンバロとストリングスによるメイン演奏楽器の交代が、歌詞上での場面転換と連動を感じさせる「朗読する女中と小さな令嬢」と、クラシック色を交えたゴスといった趣が前半は強目。
個人的に、ポップス的構成の中に執拗な変拍子や強烈なメロディーを入れることで、プログレ色を出すのがアリプロという印象があるので、「朗読する〜」のように構成自体を少し崩した展開はちょっと珍しい気もします。
ここから、アレンジ・歌詞両面で流れが大きく変わっていくのがアルバム後半。
昭和日本を思わせる言葉選びと、力強い歌メロを乗せ三拍子で展開するサビに凛とした印象を受ける「少女と水蜜桃」のような曲が、本作に入ってくるとは思っていなかったので、最初に聴いた際は驚かされた覚えがあります。
順番は前後しますが、日本軍の戦闘機とそのパイロットをテーマにした「隼の白バラ」も、題材は異なれど同路線の楽曲ながら(こちらもサビが三拍子)、タイトル通り「バラ」も表現に組み込まれているからか、こちらは振れ幅の一つとして割とすんなり入ってきた覚えが。ある意味で、後半戦の伏線としても組み込まれていて――と考えるのは穿ち過ぎでしょうか。
MVが作られており、本作のリードトラックになるのは「黒百合隠密カゲキダン」。
アッパーかつ執拗な変拍子によるアレンジ+和のエッセンス+大衆迎合的なものに分かり易く毒を吐く歌詞、という所で考えると、ゼロ年代後半辺りからの王道はこちらになって来るのかな?
前作『贋作師』(2012)の感想でも少し述べたように、年々こういうギラついた言葉が眩しくなってしまうのですが(厳密に言うと、この手の曲でディスられる側だということに気付いてくる)、何度も言うように、こればかりは作品と聴き手の相性・触れるタイミングの問題(宝野さんとしては「少女貴族」辺りから一貫しているテーマだと思う)。「敢えてアリプロ聴いている」層には、この上なく響く1曲になるかと思われます。
ここまで来ると、タイトル発表の時点で異彩を放っており、前曲以上にテンポチェンジ・変拍子祭りな「南無地獄大菩薩」も、後半の流れで切り取ると寧ろ自然に思えるので不思議。
この6〜8曲目に関しては、前作の延長線上という感もあります。
ボーカル曲としてはラストにあたる「見ぬ友へ」は、デジタルサウンドを噛ませながら、トルコっぽいメロディー・アレンジが前に出た、終盤に来てまた違った所に来た印象。勝手にジャンルを付けるなら……オスマンインダストリアル(?)。
これまた勝手な想像ですが、歌詞は前作収録「La verite」で描かれた主人公のその後、のような感じもあったり。
所謂ゴスロリ方面の優雅・耽美なアレンジで固め、「南無地獄大菩薩」が和風なアクセントとして入る位か――と思っていたら、蓋を開けてみればかなり幅が広くとられた印象の作品。
『令嬢薔薇図鑑』というタイトルやビジュアルイメージに沿った内容か、と聞かれると、後半になるに連れ逸脱していくのかな、という感じですが(「黒百合隠密カゲキダン」がMV曲というのを考えると、自分の持っていた前印象の方がズレていたのでしょうね)、アルバムとしては、楽曲間の緩急や全体の尺など併せて、変に聴きにくいという訳ではないので、その辺りの匙加減はやはりベテランの為せる業でしょうか。
前後のアルバムが、10年代のアリプロとして入り易い印象があるので、より入り込む為の次の一手、として本作をお勧めしたいと思います。
試聴あり