一人で全部食べるのかい?

CDの感想を中心に…なったら良いなぁ……

2013年05月

V2『背徳の瞳〜Eyes of Venus〜』(1992)

01.背徳の瞳〜Eyes of Venus〜
02.Virginity

全曲作詞・作曲・編曲:V2

発売日:1992/01/28
品番:ESDB-3266

Members
小室哲哉
YOSHIKI


***

何を今更と思われる向きもあるでしょうが、今回はV2の(現時点で)最初で最後のシングルを。
当時、既に人気グループとしての地位を確立していたTMNの小室哲哉と、知名度を急速に上げていたXのYOSHIKIによって結成されたユニット。TMNのセールスがピークを過ぎていたと感じた小室が、新たなインパクトを求めてYOSHIKIへアプローチをかけたのが結成のいきさつだそうで、小室側がこのプロジェクトを通じて裏方の面白さに目覚めたことが、その後の彼のプロデューサー業に繋がっていったという事で、所謂「小室ファミリー」の原点的な要素があるのかもしれません。
メインを張る小室のうにゃうにゃボーカルについては、そこを得意げに弄っては識者顔――というのが20年前から繰り返されてきたのでしょうが、改めてやるのもそれこそ今更感があるので、今回は深く触れずに。ソロアルバムやglobe、TKプロデュース期の華原朋美等で慣れちゃってるせいもあるかもしれませんけど。


01.背徳の瞳〜Eyes of Venus〜
ピアノ連弾による穏やかな入りから、シンセとドラムで絶え間なく埋め尽くすようなアレンジへ雪崩れ込むハイスピードナンバー。
メロスピ的な構成やサビメロはYOSHIKIっぽいな、でもシンセの哀愁あるフレーズやドラムと絡む打ち込みリズムのアレンジは小室っぽいな……と両者の持ち味が1曲の中で分かりやすく示されており、双方のファンの琴線に触れてきた楽曲なのではないかと(時折鳴らされる、カキンカキンとした打ち込みには時代を感じたりはしますが)。
今聴くと、こういうアレンジは浅倉大介(具体的にはICEMAN辺り)に受け継がれた気が個人的にはしています。

02.Virginity
硬質なリズムとシンフォニックなアレンジをバックに、女性と会話するYOSHIKIの語りと小室のボーカルが交互に登場するスローバラード。こちらは比較的小室さんの色が強い気がします。ボーカルを宇都宮隆にしたら、そのままTMNの楽曲として通用しそうですが、インダストリアル色も感じるリズムと、優しげなサビメロとの対比がこのユニットとしての色でしょうか。
余談ながら、V系スキーな部分としては「伝説のあの丘」という言葉選びがちょっと面白かったり(V系といったら「丘」なのですよ……ほらこのバンドもあのバンドも)

***

このシングル後、両者の作曲ペースは対照的なものになるため(どっちが良い悪いという話ではなく)、そういう意味でも絶妙なタイミングでの活動だったのかもしれません。10年経って、YOSHIKIがglobeに加入したりもしましたが、あちらも結局1曲のみの参加になっています。
2曲共、長い間本シングルのみに収録されていましたが、2011年にリリースされた小室哲哉のベスト盤『TK BEST SELECTION IN EPIC DAYS』に、「背徳の瞳」がリマスタリングされ収録されたため、タイトル曲だけであればレンタルでも聴きやすくなりました。色々な意味で面白さを含んでいるので、気になる方は今からでも是非。

背徳の瞳~Eyes of Venus~背徳の瞳~Eyes of Venus~
V2

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※おまけ
冒頭で紹介した結成の経緯などが語られている、市川哲史のインタビュー本。
YOSHIKI、小室のみならず、当時のV系とその周辺が面白おかしく(人によっては苦味も)語られています。
さよなら「ヴィジュアル系」~紅に染まったSLAVEたちに捧ぐ~ (竹書房文庫)さよなら「ヴィジュアル系」~紅に染まったSLAVEたちに捧ぐ~ (竹書房文庫)
市川 哲史

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yazzmad『Door』(2012)

01. ポスト
02. ルリピタキ
03. ノッキン
04. リプレイ

全曲作詞:ナオキ
全曲作曲:健希
全曲編曲:yazzmad

Members
Vocal:ナオキ
Guitar:健希

発売日:2012/07/25
品番;TSBR-004


***

2012年にリリースされた、yazzmadの4曲入りシングル。
この前年、イベントで鑑賞した際に披露された「リプレイ」が気になり手に取ったCDでしたが、想像以上に当たりでした。


01. ポスト
透明感のある穏やかな演奏と、一言一言噛み締めるようなボーカルによるスローナンバー。
高音のノイズを含むギターを中心とした、全体的に白くきらびやかな(所謂キラキラ系のそれとは異なる)音像が非常に心地良い。序盤のボンヤリとした雰囲気から徐々に目が覚めていくように、1曲全体を使って少しずつ盛り上げていくイメージがあります。

02. ルリピタキ
こちらも浮遊感のあるシンセとギターのアレンジが心地良いのですが、サビに入ると一気に疾走するポップナンバー。
サビでは時折ひっくり返りそうになる、人によっては危なっかしく感じるかもしれないナオキのハスキーボイスですが、個人的にはこの切なく激情的なメロディーとは相性が良いのではないかと。雰囲気モノとしての魅力とキャッチーさのパワーを兼ね備えた曲だと思っています。

03. ノッキン
前曲を更に開放的にしたような、4曲の中では比較的シンプルなバンドサウンドで展開される、アッパーなギターロック。アレンジとしては、この前に出たミニアルバム『yazzmad』(2011)の方に近い部分も感じます。
こちらもサビでの切ないメロディーと、そこに乗るハスキーなボーカルが印象的。

04. リプレイ
イントロを始め、ループするピアノのフレーズが印象的なミディアムポップナンバー。
冒頭の通り、こちらが気になり購入したのですが、とにかくそのピアノと温かみのあるサビメロが耳にスッと馴染んでくる、現時点で聴いた彼らの楽曲の中でも個人的No.1となっています。
本作は4曲入りながら、フルアルバムを聴き終わったような充足感があるのですが、それはこの曲がラストにある事が大きいかなと思っているのですが。

***

本作を聴いた後に、前後のミニアルバム・シングルも聴いており、それぞれ微妙に感触が違い、どんなバンドか掴みにくくなっていたりもしますが、単体としては名盤と思っている本作。丁度、リズム隊の正式メンバーが不在の時期にリリースされたことも、フワフワした雰囲気になった事と関係しているかもしれません。
最近になって、フルアルバム発売のニュースが入ってきたりと、今後の活動も楽しみであります。

DoorDoor
yazzmad

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オフィシャルサイト
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CLOSE『このまま』(1998)

01.このまま
02.Escapist (single version)
03.このまま (instrumental)

発売日:1998/11/20
品番:CMPR-010


***

90年代後半に活動し、メジャーデビューも果たしたCLOSE。こちらは彼らがインディーズでリリースした1stシングルになります。
インディーズ・メジャー併せて、クールな雰囲気のジャケットが多かった印象のバンドですが、こちらのジャケはデザインやロゴが随分柔らかく感じられる気が。


01.このまま
そのジャケットの雰囲気を表したような、穏やかな雰囲気を持ったミディアムポップナンバー。
白さや幻想的な雰囲気というよりは寧ろ地に足の着いた、変な言い方ですが逆にメジャーっぽい(笑)アレンジなのですが、それがハイトーンのボーカルと喧嘩していないのは、実は結構凄いことなのでは。

02.Escapist (single version)
同年に出たミニアルバム『Until eternity』収録曲のシングルバージョン。
現時点でアルバムは未聴の為比べられないのですが、一定の層にはギターで引っ張るイントロからガッツポーズものであろう、当時のザ・王道といった感のある疾走メロディアスチューンとなっています。後追いで聴いた私でさえ、懐かしい気分にさせられてしまいました。
意地悪な見方をすれば、当時の教科書的なサウンドなのかもしれませんが、だから嫌いかなのかと言われれば全く逆な訳で。コーラスとハモる切なく高揚感あるサビメロや、前述の引っ張りまくるギターソロなど、とにかく聴いていて気持ちが良く、既発曲のリメイクながら、個人的にはタイトルより印象強い1曲となりました。

***

この時期から、既にメジャー志向が強かったのだろうと思わせられる、分かりやすく色が伝わるシングル。
当時メジャーデビューした多くのV系界隈のバンドのように、フルアルバムサイズのCDはメジャーで1枚残したのみでしたが、そのアルバム『So Close』が昨年になって復刻企画の1枚として廉価再発されるなど、内部での評価も高かったのかもしれません。
ソフヴィ寄り王道バンドが好きな方は今からでも是非。

このままこのまま
CLOSE

DAIKI
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emmuree『アンティーク/呼吸』(2013)

01.呼吸
02.アンティーク

配布日:2013/03/20

Members
Vocal:想
Guitar:ハルカ
Bass:朋
Drums:ゆき


***

2013/03/20に高崎club Fleezで行われたワンマンライブで配布された、emmureeの2曲入りCD-R。
2曲共、かつて通販・ライブ会場限定で販売されていたCD『絶望を奏でる古時計、灰色のピアノ。』(2006)収録曲の新録バージョンになります。

01.呼吸
ループするギターのリフと、頻繁に転調するリズムに奇怪な印象を与えられるハードなナンバー。
叫び散らかすようなシャウトパートの占める割合が高く、アンミュレの中でも特に攻撃的な面を示しているように感じられますが、サビに入るとテンポダウンし、ダウナーなアレンジをバックに朗々と歌い上げる展開には、冷たさの方が増してゆく印象も。

02.アンティーク
曲頭から物悲しさとと温かさを併せ持つ雰囲気で進行するバラード。この音源が配布されたライブ当日では、当初のオーラス曲として披露されました(その後急遽「an「acute」」をラストに演奏)。
切なくも力強くメロディーが歌い上げられるサビ(ほんのり和風)がスッと耳に入ってくるようで、「呼吸」での緩急の激しさとは対照的な楽曲になっています。
バックで響く、白さを持ったギターのノイズがまた好み。

***


現時点で『絶望を〜』の方は聴けていないので、比べてどうこうは言えないのですが、その音源から先に新録されベスト盤に入った「gray note freak show」に比べると、即効性という点では若干譲るかなと思うものの、二度も入手方法が限られていたのが勿体なく感じられる2曲になっています。
アンミュレは思いの外配布モノが多いのですよね。

antique_kokyu

Sound Horizon『Elysion -楽園への前奏曲-』(2004)

01. Ark
02. 辿りつく詩
03. 恋人を射ち堕とした日
04. 魔法使いサラバント
05. 澪音の世界
06. 雷神の系譜
07. 檻の中の花
08. Yield

全曲作詞・作曲・編曲:Revo

Members
Guitar、Keybords、Computer Programming、etc....:Revo
Vocal、Chorus、Voice、Narration:Aramary

発売日:2004/10/27
品番:BZCS-5004


***

自主制作ラスト作『Chronicle 2nd』から7ヶ月後にリリースされた、Sound Horizonのメジャーデビューアルバム。
本作は、自主制作時代の音源からセレクトした楽曲(02〜07)と、次作『Elysion -楽園幻想物語組曲-』(2005)へ収録される楽曲(01、08/『楽園幻想〜』収録のものとは別バージョン)を収めた、ベスト兼先行CDのような作品になっています。異なるストーリーCDから抜粋している為、一人オムニバス的な性格も持っているでしょうか。
現時点で自主制作時代の音源がクロセカしか手元にないため、過去曲がどの音源のバージョンで収録されているのかあやふやなのはご了承ください。クロセカ収録の2曲(02、06)については、クロセカと同一のトラックを使用しながらも、イントロのナレーション(「第○○巻、×××ページ」の部分)がカットされているのを確認しています。
※そちら2曲については、クロセカの感想記事の方を御覧下さい。

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Sound Horizon『Chronicle 2nd』(2004)

01. 黒の予言書
02. 詩人バラッドの悲劇 (Instrumental)
03. 辿りつく詩
04. アーベルジュの戦い (Instrumental)
05. 約束の丘
06. 薔薇の騎士団
07. 聖戦と死神 第1部「銀色の死神」〜戦場を駈ける者〜
08. 聖戦と死神 第2部「聖戦と死神」〜英雄の不在〜
09. 聖戦と死神 第3部「薔薇と死神」〜歴史を紡ぐ者〜
10. 聖戦と死神 第4部「黒色の死神」〜英雄の帰郷〜
11. 書の囁き
12. 蒼と白の境界線 (Instrumental)
13. 沈んだ歌姫
14. 海の魔女
15. 碧い眼の海賊
16. 雷神の左腕 (Instrumental)
17. 雷神の系譜
18. 書の魔獣
19. キミが生まれてくる世界
20.<ハジマリ>のChronicle
21.<空白>のChronicle

・Bonus Extra Track(CD-extra)
謎のボーナス音源

全曲作詞・Image Story・作曲・編曲:Revo

Members
Vocal(01、03、05〜11、13〜15、17〜19)、Voice(01、03、05〜11、13〜15、17〜19):Aramary
Vocal(02):Hazeri
Vocal(01、07、08、11、15、18)、Voice(01、07、08、13、15):Yasrow
Vocal(01、07〜09、11、15、18)、Voice(01、03、07〜10、13〜15、17、18):Jimang
Vocal(13、14)、Voice(13、14):Haruka Shimotuki
Violin(03):Yukari Shinozaki
Other All Violin:Mutumi Suzuki
Violon Cello:Shigeru Ohara
Flute & Piccolo Flute:Remiko Kawase
Clarinet:Kazuhisa Kojima
Oboe & English Horn:Masayo Miyata
Fagott:Hiroaki Kimizuka
Trumpet:Miki Iwatuki
Trombone:Takuya Honda
Alto Sax & Tenor Sax:Kei Suzuki
Mandolin & Bouzouki &Acoustic / Nylon Guitar、Electric Guitar / Bass & Accordion & Keybords、Udu & Djembe & Tanbourine & Castanet & Other Percussion & Computer Programming、Recorded & Mixed & Mastered:Revo
Booklet & Lebel Design:Yokoyan

発売日:2004/03/19
品番:SH-CHR05


***

Revo率いるSound Horizonが2004年にリリースした、自主制作時代最後のアルバム。1st Story Renewal CDと銘打たれていますが、これは1stCD「Chronicle」の楽曲が基にあり(私は未聴。全曲インストとのことです)、トラックを大幅に増やし、ナレーション・ドラマパートを積極的に取り入れたフルサイズのアルバムとなったため。この時期は複数の登場人物の多くをAramary(女性キャラ)とJimang(男性キャラ)の2人で廻している為、今聴くとちょっと変な感じもしますが(ヒーロー寄り・ラスボス格が、どちらもじまんぐさんのショワショワボイスだったりとか)、まぁそこも含めて味というか。
殆どの曲始まりに、ストーリーの時間軸を示すナレーションが入っていたり、後の作品ではブックレットに未記載になりやすくなるセリフが、ほぼ全て載っていたりと、物語のアウトラインの把握しやすさはSHの中でも上位に来るのではないかと。因みに、インスト曲にも物語のイメージ的な詩が記載されています。
曲数は多めですが、ストーリーに合わせてインスト・短編・長尺の配置がされている感もあり、実は最近のストーリーCDより取っ付きやすいのかもしれません。リズムは全て打ち込みなのですが、個人的には特に気にならず。


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