「ハサミ男」監督:池田敏春 出演:豊川悦司、麻生久美子、阿部寛、樋口浩二 ほか(2005)

※あらすじ
女子高生を絞殺し、その死体の首に鋏を刺すという連続殺人事件が発生。マスコミはその手口から犯人を「ハサミ男」と呼ぶように。「ハサミ男」は3人目のターゲットの目星を付けるのですが、自分が手を下す前にそれまでの自分の手口と同じ方法で彼女が殺されているのを発見してしまいます。「ハサミ男」は自ら事件について調べ始めます。
一方、事件の捜査をしている刑事課の磯部達は、警視庁科学捜査研究所から派遣されてきた堀之内と共に、「ハサミ男」の逮捕に向けて調査を始めるのですが…。


***

※ネタバレなし感想

この映画、1999年に出た殊能将之の同名小説が原作なのですが、昨年人に薦められ読み、久々に「やられた!」感を味わった小説で、デビュー作ながら展開の面白さと読みやすさがあり(この後の殊能将之作品も一気に読んだのですが、これが一番入りやすいかな、と)、個人的にもお勧めしたいミステリーになっています。ただこの小説、映像化したら即座にネタバレしちゃうだろ! と思っていたので、既に映画化されていたと知った時には驚いたものでした。あ、でも刑事課の面々の微妙なスチャラカ集団ぶりはドラマ向きかも、と思ったりはしましたけれど。そんな訳で、映画の出来はぶっちゃけどうでも良くw、あのストーリーをどう映像で見せてくるのか、という点のみが気になり、今更ながらDVDをレンタルしてきたのでした。

始まってすぐの感想としては、「なるほどこういう視点で来ましたか!」といった所でしょうか。原作未読者にはネタバレにならない程度に微かな違和感を感じさせストーリーを運んでいく方法は上手くいっていると思いました。物語の設定に幾つか変更はありますが、基本的に原作通りに進んでいきます。ただ終盤に原作には無かったストーリーが加えられており、映画の後味が幾分健康的になった印象を受けました。ここはちょっと好みが分かれるかも。個人的には狂気を残したまま終わる原作のラストが好きですが、先に触れたほうに印象が引っ張られるのは仕方が無いのかもしれません。また、磯部達刑事のキャラクターは、あの軽めの感じが上手く出ていた気がします。映画版のラストならこの面子のままシリーズ化出来ますよw 麻生久美子の乾いた雰囲気も良かったです。被害者の弟役で出てきた柄本祐は、この後出演した「夜のピクニック」や「コワイ女」に比べると、そんなに年数に差が無いのに、演技がこう何というか、…良く言うと初々しいw

あとこの映画、画面の感じ、というか演出・BGMがどうにも古臭い、と言うか昔の刑事ドラマを連想させ、夕方にやっている70~80年代の2時間ミステリードラマを見ている気分になってしまいました(苦笑)。これがこの監督の色なのかは分かりませんが、この辺も雰囲気作りと見るか安っぽいと思うかで好みが別れるかもしれません。…いややっぱりちょっと安っぽいかも(苦笑)。

細かい点では色々ありますが、トータルでは原作既読・未読に関わらず、結構楽しめる内容になっているのではないでしょうか。ただ個人的には先に原作を読んだ方が良いかな…とは思いますが。あの驚きを是非共有したいw


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