Oranges & Lemons・栗コーダーポップスオーケストラ「Tribute to あずまんが大王」(2002)

01. 空耳ケーキ
02. 風の色マーチ
03. 星のめがね
04. 胡桃鳴らす青空
05. どういうことかな(氷の十字路編)
06. 風の色マーチ(reprise)
07. moi moi
08. Weepin’rains
09. 朝焼け線路
10. Raspberry heaven

作詞 01〜05、07〜10:畑亜貴
作曲 01:伊藤真澄/02、03、05〜09:栗原正己/04、10:上野洋子
編曲 01〜03、07、09:栗原正己/04、05、10:上野洋子、06:Oranges & Lemons/08:伊藤真澄

Oranges & Lemons
vocal、accordion、boom wacker:上野洋子
vocal、glockenspiel:伊藤真澄

栗コーダポップスオーケストラ
recorder、pianica、mellophone、electric bass、boom wacker:栗原正己
recorder、soprano and slto saxphone、flute、clarinet、tambourine、boom wacker:川口義之
recorder、acoustic guitar、electric guitar、banjo、BS-2、boom wacker:近藤研二
recorder、tuba、trumpet、trombone、boom wacker:関島岳郎
xylophone、marinba、vibraphone、glockenspiel、conga、bongo、darabukka、boom wacker:三沢泉
acoustic piano、electric piano、pianica、accordion、toypiano、synthesizer:斉藤哲也
drums、toy & percussion、boom wacker:イトケン

桑野聖strings

発売日:2002/10/02
品番:LACA-5123


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好きとか嫌いとかはいい トマトを食べるんだ


あずまきよひこ原作の同名漫画をアニメ化した「あずまんが大王」にて、OPとED曲を担当した「Oranges & Lemons」と劇中BGMを担当した「栗コーダーポップスオーケストラ」による共作アルバム。ちよ父がこっちを見ているジャケットが印象的です。
本作は、主題歌のリアレンジ及びBGMのボーカルアレンジを中心に、リコーダーを中心としたアコースティックな音作りが前面に出ており、先に出ていたオリジナル主題歌シングルやサウンドトラック盤とはまた違った印象を受けるアルバムとなっています。

以下各曲について。


01. 空耳ケーキ
アニメOP曲のリアレンジバージョン。
電波ソングの系譜にも入れられそうな強烈なインパクトとキャッチーなメロディーを持つ原曲を、構成自体はあまり変えずアコースティックアレンジにしたらこうなったといった感触ですが、それが却ってフワフワしたボーカルやカオス極まりない歌詞が前に出る結果となり、柔らかい音作りながら妙な聴き心地を覚えます。実は原曲の方がポップスとしてはマイルドだったのではないかとも思えたり。
オリジナル未聴の方はそちらも是非。

02. 風の色マーチ
タイトル通り行進曲風の賑やかな楽曲。元々サントラでも複数のアレンジが存在し、アニメ本編でもよく使われていた覚えがあるので、作品のテーマ曲的な位置付けになるのでしょうか。
管楽器やピアニカを中心に、子供番組でも用いられそうな親しみやすさを持ちつつ切なさも感じるメロディーが前面に出ており、耳にスッと入ってくる印象。また原作や本編に触れた人には、別れを意識したような歌詞に感じる所があるかも知れません。そういう意味では、これをラストに持ってきても違和感は無いかも。

03. 星のめがね
軽やかに鳴るリズムや木琴をメインに笛とフニャフニャしたボーカルが乗る、穏やかなポップチューン。
メルヘンチックな印象の楽曲ですが、バックで断続的に鳴らされるポワーンとした音が、楽曲の浮世離れ感を更に加速させている気がします(何の楽器だろう…)。間奏で転調しほんのりクラシカルな色が付くのも好み。

04. 胡桃鳴らす青空
この曲だけBGMアレンジではなく、上野洋子作曲による新曲になります。
やはり穏やかなアレンジなのですが、若干バンドサウンド寄り、そして素直に浸らせないような意図が感じられるトリッキーな展開も持っており、ファンタジックなプログレ要素も強いのかな? とも。
とは言えのんびりした雰囲気のリコーダーや、サビでの可愛らしいメロディーのハモリも聴けるので、終わってみれば飲み込みやすい曲になっている感触です。

05. どういうことかな(氷の十字路編)
基本的にほんわかした作風の本作ですが、その中でどうにも異彩を放っているのがこれ。
同名のBGMを元にした曲なのですが、スローテンポである事とメインの旋律が守られている事以外は原曲ののんびりした雰囲気が取り去られており、微妙に左右に揺らされるギター、無感情なボーカル、病み病みな歌詞等によって、軽くホラーな空気すら感じるアレンジとなっています。後半では、叩きつけるようなピアノや暴走する管楽器も挿入され緩やかに崩壊していくイメージが。
まさかこの作品の関連CDで肝を冷やす事になるとは思わなかった、というのが初聴時の印象。次のトラックで一度仕切り直し的な構成になっているのも納得です。

06. 風の色マーチ(reprise)
2曲目のメロディーを使った6秒ほどのトラック。
アニメのアイキャッチをアカペラメインに再現したと言った方がしっくり来るかも。

07. moi moi
プラスチックのパイプを叩くようなポコポコしたイントロにおっとなっていると、ピアニカやバンドサウンドが加わり疾走しだす軽快なポップチューン。このイントロで使われているのがブームワッカーという楽器ですが(日本ではドレミパイプという名前で販売されているそう)、調べてみたら中々面白く……。
それはさて置き、賑やかな演奏とフィンランド語と日本語が交錯する言葉遊び的な歌を乗せたボーカルによって、とにかく楽しい雰囲気の楽曲になっており、サビの歌詞通りに変なリズムになったりと(!)色々ギミックも入れながら頭空っぽにして楽しめるのが素敵。
個人的には「風の色マーチ」と並んでツボです。

08. Weepin’rains
伊藤と上野が交互にメインボーカルを採る、落ち着いていながらやはりどこか浮世離れした雰囲気を持つバラード。
アコギ、チューバ、マリンバをメインにした優しいアレンジに、ちょっと哀愁のあるリコーダーと歌メロが乗った「星のめがね」と同系統なものを感じる小曲ですが、タイトルや歌詞も相まって更にしんみりした後味が残ります。
サントラの方には、これに限らずクサめのBGMが結構入っていたり。

09. 朝焼け線路
メイン曲ではラストということもあってか、前曲に続き切ないメロディーを前面に出した、訥々と進行するバラードとなっており、歌詞も「風の色マーチ」と若干リンクしているような。
結局終盤にこういう曲持って来られるとグッと来る辺りに、何処まで行っても自分はポップス脳なのだと思わせられます。終盤は各パートが少しずつ前に出た大団円的な展開に。

10. Raspberry heaven
こちらはED曲のリアレンジバージョン。
原曲は温かみのあるメロディーが映えるポップチューンですが、こちらは上野の多重アカペラに伊藤のボーカルを乗せ、サビのパートをメインに1分半ほどの尺で再構築したようなアレンジになっており、どちらかと言えば上野のソロに近い雰囲気でしょうか。
原曲を聴いている人には面白いと思うのですが、これ単体で聴くとちょっと唐突感があるかもしれません。

***

基本ホワホワしつつちょっと切なさ、そして不思議さも感じるアルバムですが、4,5曲目のように若干原作の雰囲気を離れたような楽曲もあったりするので、原作は知らないけれど参加ミュージシャンに興味はある、けれどいきなり曲数の多いサントラは……という人には、ある意味此方の方が入りやすいかも知れません(尺も30分と短めですし)。

取り敢えず私は改めてアニメを見返したくなりました(笑)

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Tribute to 『あずまんが大王』 - ベアリアス・アーティスト