love solfege'「墟律のサンプル」(2010)

01.墟律のサンプル
02.Cronaca dell'Akasha
03.アルカナの祈り
04.iota-theta
05.褪色回廊
06.somnium vitium
07."Land art"
08.MEMORANDOOM

作詞 02:Laura Baggio/03:ぬきちゃん。/05:リチャード・チャーン/06:Jenya/07:鮎/08:神田川雙陽
全曲作曲:オーギュスト棒
全曲編曲:auguste beau、namanie banzaburo

発売日:2010/08/14
品番:KDR-072


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作曲を手掛けるオーギュスト棒(松本慎一郎)を中心とした「love solfege'」が2010年にリリースしたアルバム。5年程前からハマっていたのですが、感想を書くのは初めてですね。
結成10周年ということで、原点回帰的な方向で作っていたらしいのですが、聴く方にとっては今作も複数の女性ボーカルを迎え、クラシカルな要素をふんだんに使いながら聴き心地はポップに仕上がっているアルバムという感じを受けます。前作よりは少しカラフルな気もしますが。

以下各曲について。


01.墟律のサンプル
ボーカルは鮎。
壮大なイントロを抜けて、アップテンポな打ち込みリズムと、クラシカルなシンセのフレーズ・怪し気ですが流れるような歌メロが交差する楽曲。終始シリアスな雰囲気ですが、メロディーが立っているので聴きやすいと思います。そのボーカルですが、ずっと歌詞なしのコーラス(造語かも)で通しています。何と言ってるんだろう…。

02.Cronaca dell'Akasha
オペラティックな出だしからノックアウトされました…綾野えいりパネェ。少しダンサブルなデジタル音と、これでもかとばかりに使われるオーケストラ音によるクラシカルなメロディーの絡む壮大な曲ですが、その絡みがもうツボ過ぎます。透明感と力強さを持ったボーカルもバッチリハマっていると思いますし(途中の多重コーラスがまた凄いんだ)、8分近い曲にも関わらず、殆どスピードを落とさず開放的なアレンジで突き進むのも振り切った感じでたまりません。個人的に本作ではぶっち切りで好みですね。
…テンションに任せたら絶賛ばかりに(苦笑)。とりあえず、自分が「Mignon」でlove solfegeを知った時の衝撃を思い出させる程の曲だったという事でひとつ。

03.アルカナの祈り
ボーカルは真理絵。
切ないストリングスのメロディーが映えるイントロから始まる、打ち込みビートが目立つこちらもオペラ寄り(ボーカルがすっきりした声の人なので、どちらかと言えばミュージカルかな?)な楽曲。クラシカルなギターのフレーズも入りますが、どちらかと言うとキーボード主体のシネマロック…ってこれじゃAMADEUSだwクラシカルポップスですね。ストーリー性が強そうな歌詞もあって、メロディアスながら何処か悲壮な雰囲気も。こちらも8分近くあります。

04.iota-theta
軽快なピアノ演奏によるインスト。2分半程の曲ですが色々やっています。

05.褪色回廊
ボーカルは楠鈴音。
輪唱コーラスによるメロディーが可愛らしくも癖になるポップチューン。パキパキした打ち込みから、サビでは一転して大仰なオーケストラアレンジ、一部では民謡っぽい音も入ったりと展開の緩急が面白いです。作曲者、オーギュスト棒氏のブログによると、この曲は1時間半でレコーディングが終わったとか。

06.somnium vitium
打ち込みリズムと、クールなJenyaのボーカルが前に出た、R&B色の強い楽曲。淡々と進行する印象のポップチューンですが、サビはキャッチーだったりスタイリッシュな流れに溶け込みながらもピアノソロはやっぱりクラシカルだったりと、その辺の主張はしている気がします。

07."Land art"
こちらも全曲の流れを汲んだような、軽快なリズムで引っ張る曲調ですが、要所要所で叙情的なメロディーを奏でるアコギや(一部ではチェンバロっぽく聴こえたり)、ボーカルが綾野えいりという事もあってか印象は結構異なります。こちらはクラシカルな要素がより前に出ているような。「Cronaca〜」が即効性に長けているなら、こちらはスルメ型の楽曲でしょうか。

08.MEMORANDOOM
ボーカルは桜庭わかな。
流麗なピアノと弦音によるイントロから、ループするデジタルサウンドに気怠げなボーカルが乗って展開するダンサブルな楽曲。ですがサイバー色がなく、寧ろ妖し気な空気がプンプンなのは、ボーカルの声質が妙にエロい(個人的に)のと、その歌メロの引きが強いからなのかなと思ったり。コーラスも裏で複雑に絡み合っています。終盤は再びピアノ中心のパートになり厳かに終了。

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個人的には02、03が頭抜けて好きですが、他の曲もクラシカルなメロディーをうまく織り混ぜた聴きやすい楽曲が揃っているのではないでしょうか。作り手からすると難しいことを色々試しているようですが、自分みたいな音楽理論が全く分からない人にも、小難しくならずちゃんとポップスとして成立しているのは好印象。
自分が聴いてきた限りでは、1枚気に入れば自動的に他のCDもハマるグループだと思うのですが、本作は最近のアルバムの中でも入りやすくなっている気がします。ディープ過ぎるのは苦手だけど、クラシカルなメロディーが入ったボーカルものってないかな…と思っている人は一度お試しを。

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アルバム特設サイト(試聴あり)
love solfege’

オフィシャルサイト