DALIS CAR「InGladAloneness」(2012)

01. King Cloud
02. Sound Cloud
03. Artemis Rise
04. Subhanallah
05. If You Go Away

作詞 01:DAVID HORNBY/02、03:PETER MURPHY/04:[TRADITIONAL]/05:Rod McKuen
作曲 01〜03:MURPHY、KARN/04:[TRADITIONAL]/05:JACQUES BREL

発売日:2012/04/04
品番:FIFO-0021(日本盤)

Members
Bass、Bass Clarinet+Additional Guitars:MICK KARN
Vocal、Keyboads:PETER MURPHY


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元BAUHAUSのボーカリスト:ピーター・マーフィーと、2011年1月に逝去した元JAPANのベーシストで、日本でも様々なバンド・サポート等で活動していたミック・カーンによるプロジェクトのミニアルバム。元々両バンド解散後に結成されたバンドでしたが、中の人同士で色々とあったらしく、アルバムは「THE WAKING HOUR」(1984)の1作のみで活動が終了していました。2010年に、ミックの癌とDALIS CAR再結成のニュースがほぼ同時に入ってきたのを覚えており、その後続報がないままミックが亡くなったため、楽曲はお蔵入りになってしまったのかとも思っていましたが、彼の死後1年以上経って世に出ることになりました。本作のミックスは、同じくJAPANのドラマーでありミックのソロにも度々参加していたSteve Jansenが行なっています(本作のドラムも彼の手によるもの)。
全体的には、前作(と言って良いのかわからないけど)に比べスローな曲がメインとなりながら、作風自体は大きく変えないまま、2010年代の技術で音作りを発展させたらこうなる……的な印象を受けました。勿論ブヨブヨベースと低音ボイスは全開ですよ。

01. King Cloud
語りと歌唱を交えたボーカルに、ベースと管楽器が絡むスローナンバー。決して派手な曲といった印象ではありませんが、サビ部分での朗々とした歌い上げと中東的旋律によって、どこか現実から離れた壮大さを感じられます。

02. Sound Cloud
こちらもメロディーに中東的な匂いを感じるポップチューン。フルートやストリングスの流れるようなフレーズは勿論、ハープのような印象も受けるギターやポワポワ跳ねるベースが聴いていて心地よく、前曲の壮大さを引き継ぎつつ、ポップスとして開かれた要素も備えている気がします。また、前作には感じなかった要素である「ピーターが伸び伸び歌っている」という点も大きいのではないでしょうか。

03. Artemis Rise
「THE WAKING HOUR」に収録されていたインスト曲「Artemis」に、ボーカルを入れて録り直したリメイクバージョン。日本盤のライナーによると、前述のレコーディング中における2人の衝突によって、ボーカル入れに至らなかった曲ということなので、25年以上経って録られた今回のバージョンが、元々想定されていた形ということでしょうか。
原曲は、ベースが前面に出ながらもちょっと印象に残り辛いというか掴み所がない印象だったのですが、曲自体のアレンジはあまり変えないながら、打ち込みだったリズムが生ドラムになったことや、ボーカル導入によって若干ノリが良くなり、インパクトも増したように感じます。結果原曲にも感じていた不気味なオーラも更に濃くなったという。
また今回原曲を聴き直してみた所、サビ部分のメロディーをサックスでなぞった形になっていることが分かりました。

04. Subhanallah
後ろ2曲はカバーになりますが、こちらはイスラム圏の民謡で、英訳すると「Glorious is God」だそう。
バックにベースとキーボードを鳴らしつつも、女声ボーカルをゲストに迎えたコーラスが前面に出ており、(当然かも知れませんが)日本人の耳からすると異国感たっぷりで荘厳な印象を受け、こういう曲をカバーに選ぶ辺りに、両者の出身が現れているのかも知れません。2分ちょっとと短めの曲ですが、パッと聴きのインパクトは中々のものではないかなと。

05. If You Go Away
こちらはジャック・ブレルのカバー。元々フランス語の曲を英訳したものが、カバーのスタンダードとして広まったそうです。
不勉強にして原曲・他のカバーとも未聴なので聴き比べは出来ないのですが、こちらはアコギと管楽器をバックにピーターの低音ボーカルが物悲しいメロディーを歌い上げる、しんみりとしたバラードになっており、(本人にそんな意図は無いのは分かりますが)結果的にピーターからミックへのはなむけでCDを〆ているような印象も受けてしまったり。

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5曲中1曲がリメイク・2曲がカバーという事なので、量的な食い足りなさは如何ともしがたい所はあるのですが、既に作曲者がこの世に居ないという事情が事情なので、形として世に出ただけで御の字なのでしょう。84年の路線を更に成熟させた音を聴きたい人のみならず、中東・オリエンタル寄りのフレーズを用いた音に興味がある人もいかがでしょうか。

因みに、日本盤にはスティーブ・ジャンセンが撮影したミックの写真+スティーブら元JAPANのメンバーを始めとした彼と関わった人達(日本からは土屋昌巳、SUGIZO、屋敷豪太、キリト等)のメッセージ入りのブックレットが付いています。

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