Sound Horizon『Elysion -楽園への前奏曲-』(2004)

01. Ark
02. 辿りつく詩
03. 恋人を射ち堕とした日
04. 魔法使いサラバント
05. 澪音の世界
06. 雷神の系譜
07. 檻の中の花
08. Yield

全曲作詞・作曲・編曲:Revo

Members
Guitar、Keybords、Computer Programming、etc....:Revo
Vocal、Chorus、Voice、Narration:Aramary

発売日:2004/10/27
品番:BZCS-5004


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自主制作ラスト作『Chronicle 2nd』から7ヶ月後にリリースされた、Sound Horizonのメジャーデビューアルバム。
本作は、自主制作時代の音源からセレクトした楽曲(02〜07)と、次作『Elysion -楽園幻想物語組曲-』(2005)へ収録される楽曲(01、08/『楽園幻想〜』収録のものとは別バージョン)を収めた、ベスト兼先行CDのような作品になっています。異なるストーリーCDから抜粋している為、一人オムニバス的な性格も持っているでしょうか。
現時点で自主制作時代の音源がクロセカしか手元にないため、過去曲がどの音源のバージョンで収録されているのかあやふやなのはご了承ください。クロセカ収録の2曲(02、06)については、クロセカと同一のトラックを使用しながらも、イントロのナレーション(「第○○巻、×××ページ」の部分)がカットされているのを確認しています。
※そちら2曲については、クロセカの感想記事の方を御覧下さい。


01. Ark
アニソンばりな歌メロのキャッチーさと、所々エフェクトをかけて無機的な雰囲気を持たせたボーカルが対比的な疾走デジポップチューン。『楽園幻想〜』バージョンでは更に追加されますが、速弾きギターソロも度々挿入されるなどメタル方面のアレンジも意識したとも思える。アップテンポ且つ軽快なノリながら「さぁ、楽園ヘ帰りましょう、お兄様……」のくだりが、好き嫌いをハッキリ分けそうな楽曲となっています。また、『楽園幻想〜』バージョンに比べボーカルのエフェクトが薄めだったり、SEの数が少なかったりと、こちらのバージョンは少しシンプルなアレンジになっている印象。
当時聴いた時は、医療寄りの単語が登場する病んだ内容の、退廃的なSF要素を含んだ歌詞・ナレーションによって、曲調は全く違えど某Dirがメジャー1stアルバムをリリースした辺りの世界観を思い出したり。
前作収録「黒の預言書」と同じく、SHの特徴を分かりやすく提示する点では、アルバム頭に相応しい曲と言えるのではないでしょうか。

02. 辿りつく詩
『Chronicle 2nd』(2004)より収録。冒頭の台詞がカットされています。

03. 恋人を射ち堕とした日
『Lost』(2002)、『Pico Magic』(2003)収録曲。
全体的に浅倉大介っぽさを感じる、キラキラしたシンセが前に出たダンサブルなポップチューン。
歌謡曲寄りの切ないメロディーには、何となく90年代のDAプロデュース周りを思い起こさせますし(パクリ的な意味ではなく)、ラストサビ前でのギターソロの満を持して感も、その辺りの王道ポップスといった感があり、購入時予想していたものとは違えども、結果的に非常にしっくり来てしまった1曲。

04. 澪音の世界
『Pico Magic Reloaded』(2003)収録曲。
冒頭、Jimangによるナレーションが終わってからのバイオリンにノックアウトされた、「Ark」を更にメロディアスにしたような、(個人的)キラーチューン。当時オフィシャルで試聴した際、本作の購入を決定づけさせた楽曲でもありました。
どキャッチーな歌メロとナレーションが交差する展開や、バックやソロパートでのバイオリンの軽快なフレーズ、サビのやり過ぎなまでの開放・疾走感など、休みなくこちらのツボを突いてくれます。思わせぶりな単語を散りばめながら、結局何だか良く分からないまま終わる歌詞も、中二度抜群で良し。所謂1期SHの中ではトップクラスに好みかもしれません。
メジャー3枚目のアルバム『Roman』(2006)には、こちらと対になっていると思われる「星屑の革紐」がありますが、そちらもまたツボ。

05. 魔法使いサラバント
『Lost』(2002)、『Pico Magic』(2003)収録曲。
分かりやすいアラビアンなアレンジによって、物語の舞台がパッと浮かばせてくれる民謡ポップス。笛のフレーズもちょっと怪しげです。
こちらもじまんぐさんが、メインのナレーションと若干のボーカルパートを務めていますが、彼を評する(褒め言葉として)「胡散臭い」というフレーズは、この曲の歌詞が元になってたでしょうか。改めて聴いても……うん、胡散臭い!(笑
後半、ゲストボーカリストとして霜月はるかが参加しますが、そこからの三拍子へ転調する流れが特に好み。

06. 雷神の系譜
『Chronicle 2nd』(2004)より収録。冒頭の台詞がカットされています。

07. 檻の中の花
『Pico Magic Reloaded』(2003)収録曲。
陰のある優雅な旋律を奏でるピアノとアコーディオンが前面に出ている、ジャジーなアレンジのナンバー。
仏語を交えて艶っぽく歌うあらまりさんのボーカルは楽曲に合っているのですが、そこで歌われる内容が猟奇連続殺人犯の一生というのがまた何とも。後半に登場するじまんぐさん演じる学者が、これまた胡散臭さプンプンで。
勿論フィクションですが、具体的な地名・人名を挙げた描写には、優朗(SPEED-iD)のソロ『UNHOLY』シリーズを思い出したり。あちらはノンフィクションですが。
この殺人犯:ミシェルをテーマにした楽曲は、自主制作時代のCDにも幾つかあり、一連のシリーズになっているらしいのですが、いかんせん手元に無いため、その辺の解説は他の方に。メジャーリリースの方では、『Roman』収録「黄昏の賢者」及び、当時オフィシャルサイトでダウンロード出来たボーナストラック「yaneuraroman」(ベスト盤『Chronology2005-2010』(2012)に「屋根裏物語」とタイトルを変えて収録)と関連がありそうです。

08. Yield
冒頭からのバグパイプのフレーズが哀愁たっぷりの、アイリッシュ色の強い切なくも温かいメロディーが映えるバラード。農作物の収穫をテーマにした内容と思いきや――な展開に、当時驚いた覚えがありますが、アレンジ自体は民謡調のポップスが好きな人の琴線に触れてくるのでは。「Ark」とは対照的な楽曲という意味でも(詞はどちらもヤ○デレ気味ですが)、次作の楽曲の幅広さを想起させれられた人は多かったかもしれません。
『楽園幻想〜』バージョンとの違いとして、アウトロがフェードアウトになっていることや、「Ark」と同じくSE数の差が挙げられます。

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初めて手に取ったSHのCDという事もあって、思い入れもひとしおなのですが、バラバラの音源からセレクトされていることもあって、物語音楽・歌劇的方面にしっかり没入したい人には物足りない部分があるかもしれません(そういう方は『楽園幻想〜』から聴いちゃうのもアリだと思う)。ボーカルパートをしっかり取ってある楽曲がメインのため、私のようにどのような楽曲かを知る入門盤として聴くには適しているかと。現時点で、自主制作時代の音源をライブ・映像作品以外で聴けるのは本作のみというのも大きいポイントだと思っています。
本作とシングル『聖戦のイベリア』を併せて聴くと、彼らの傾向が掴みやすいのかなと個人的には。

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Sound Horizon

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タワーレコード(試聴あり)
Revoオフィシャルサイト(試聴あり)