姫神せんせいしょん『奥の細道』(1981)

01. ありそ(荒磯)
02. 奥の細道
03. リ・ア・ス
04. 紫野
05. 耶馬台国の夜明け
06. Gun-Do
07. 岩清水
08. 行秋
09. 螢
10. やませ

作曲 01、02、04〜06、08〜10:星吉昭 / 03、07:佐藤将展
全曲編曲:姫神せんせいしょん

発売日:1981/08/??、1985/10/05(CD再発盤)、1993/11/03(CD再発盤)
品番:C28R0080、D32R0023(CD再発盤)、PCCR-00091(CD再発盤)

Members
シンセサイザー:星吉昭
ドラム:佐藤将展
ギター:大久保正人
ベース:伊藤英彦


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シンセサイザー奏者:星吉昭を中心に、岩手で結成された「姫神せんせいしょん」の1stアルバム。私の手元にあるのは、「姫神名作大全集」の1枚として、1993年にCD再発されたものになります。ブックレットに、手紙風のライナーがあるのですが、LPに印刷されていたものをそのまま縮小コピーしたためか、多くの字がかすれていて非常に読み難い(苦笑
後の星吉昭さんによるソロプロジェクト:姫神の前身としても捉えられますが(現在は長男の星吉紀を中心に活動中)、この時期はギター、ベース、ドラムが在籍したインストバンド編成。こちらの佐藤将展、大久保正人、伊東英彦は、星吉昭さん逝去後、追悼目的で「せんせいしょん」を結成。本作収録曲(02、03)のリメイクを含むアルバムなどをリリースしています。
主旋律として前に出て来るのは、メインコンポーザーでもある星さんのシンセサイザーなのですが、これを使って(当時の)近未来感・サイバー感を表すのではなく、逆に日本人好みの郷愁を誘われるコブシの利いたメロディーが、全編に渡って使われているのが印象的。1981年という時期を考えると、本作の衝撃はなかなかのものだったのではないでしょうか。この、歌謡曲とはまた違ったところにある和風・東洋風のメロディーは、後の姫神名義の作品でも受け継がれていくことになります。

また、本作の特徴として、姫神せんせいしょん時代はバンド編成であるからかリズム隊の主張も大きく、フュージョン・ジャズ要素を感じる軽快なテンポの楽曲が多いことも挙げられます。
タイトル曲の「奥の細道」や「リ・ア・ス」は、跳ねるリズムが絡んだ和風テクノポップといった感触ですし、LPではB面前半にあたる「Gun-Do」、「岩清水」は、コーラスを交えた壮大なアレンジ、という90年代後半以降の姫神のイメージで聴くと、びっくりするかもしれない疾走ポップナンバーとなっています。ベタですが、「神々の詩」が入り口だったので、自分もこの流れは新鮮でした。個人的に、「Gun-Do」は可愛らしいとすら(笑
対して「行秋」は、鐘の音などを模したSEが挿入される演出と、哀愁全開の旋律による、壮大なスローナンバーとなっています。現時点で姫神の全作品を聴けていないため、断言はできませんが、この後の路線を予見した1曲になっていると言えるかも。

時代的なものもあってか、後のサウンドと比較すると大分シンプルなアレンジで、人によってはチープな印象も受けるかもしれませんが、メロディーは非常に取っ付き易いですし、円熟する前の瑞々しさも感じられるので、こちらはこちらで面白く聴けるのはないでしょうか。


試聴あり
奥の細道
姫神せんせいしょん
ポニーキャニオン
1993-11-03