本作は、highfashionparalyze時代に出した2011年のシングルとアルバム『人は様々な自虐の唄を鳴らす』(2015)収録曲のリメイクが中心となっていますが、ギター1本+ボーカルのみという編成だったところに、土台(といって良いのか分かりませんが)となるリズム隊が入ったことにより、どのようなアレンジになるのか、ある意味音源でも緊張感があった楽曲に聴きやすさが生じたりするのか、等という点にリリース前興味をそそられたものでした。

結果としては、aieさんの乾いたギターにねちっこいkazumaさんのボーカルが絡む、というhfpからの軸はそのままに、『人は様々な〜』で感じた叙情的なメロディと、ドロドロカオスな面の対比が、より分かりやすく感じられるようになったでしょうか。
激情的に歌い上げる「劇中劇」、新曲「嫋嫋たる対象」や「管」、「形の無い、何よりも、愛したのは、お前だけが」といった、フッと優しげなメロディが挿入される血生臭いラブソング(と私は思っている)などは、所謂バンド編成となったことで、興味はある面子だけれども……となっていた層を引き込む力を強めた感があります。
「形状において歪な、または不自然な」では、ジャジーなリズムアレンジにスリリングな印象も与えられ良い意味での意外性も感じられました。「形状において歪な〜」は、hfp時代のライブでは(サビの歌詞から「I kill my shadow」として覚えていた)重た目なスローナンバーだったことも、より驚きに繋がったのかもしれません。

対するカオスな面を担っている印象なのは、hfp版でも激しさに特化していた印象の「箍を外す場合、穴に群れる具合」。他を巻き込まんとするドラムが入ったことで、単体の力は勿論のこと、アルバム中の流れでもアクセントを付けています(そういう意味では分かりやすいと言えるかも)。何よりラストの「蟻は血が重要である」では、シングル版より大幅に構成を崩し即興性を強めた結果、ジャスト14分に渡ってkazumaさんのボーカルが暴れる事態に。要所要所にドラム中心による仕切り直し的な展開や(バックで時折入る声はsakuraさんなのかな？)、メロディを中心としたパートはあるものの、それによって緩急のきつさがより強調されるため、呆然としたままアルバムを聞き終える人もいるかもしれません。

『人は様々な〜』でも感じましたが、ポップス構成を守る所と壊す所、そこに入るドス黒さの塩梅が絶妙なアルバムという印象。今作で待望の歌詞表記が付いたことで、よりじっくりアルバムに迎えるようになったのも個人的には嬉しかったですね。
hfpから通して初の一般流通作品ということもあり、より手に入れやすくなったのもポイント……だったのですが、これ書いている時点(2017/01/09)で在庫が無いのか、中古のみでプレミア値になってしまっているのが残念。活動は継続していますし、どこかのタイミングで再販がかかれば良いのですが。