Aioria「煌め逝く瞬間」(2002)

01. furitsumoru 〜降りつもる〜
02. 光彩
03. 凍てつく世界
04. ファンタジア
05. 瞬き…
06. 蠱惑ナ果実
07. 運命
08. 瑠璃蝶
09. いばらの森
10. 蒼月の陰影
11. 花詞

作詞 02〜09、11:sarino/10:ミサ
作曲 02〜11:ミサ
編曲 02〜11:Aioria

発売日:2002/04/01
品番:LOOP-2005CD

Members
Vocal:Sarino
Guitar、Dances:未散
Drum:大城
Guitar、Keybords、Chorus:ミサ

Additional Musician
Bass:Ren
Percussion:Tohru


***

Sarino(ex-未散プロジェクト、Sherry Trip Realize〜TINC、現ニンジャマンジャパン、Annie's Black)、未散(ex-L'yse:nore、未散プロジェクト、S to M etc)、大城(ex-未散プロジェクト、現D)、ミサ(ex-嘆キ使徒〜Davidノ使徒:aL、Klein Kaiser、BABYLON)によって結成されていた「Aioria」がリリースしたフルアルバムにして唯一の単独CD音源。収録曲の大半が、これより前にリリースされたデモテープ収録曲の新録ということもあり、ベスト盤的な位置付けもできるかもしれません。
全曲をミサが作曲していることもあり、これより前のダビデやAioriaの後に結成したBABYLONでも聴ける、シンセを導入した歌謡+クラシカルなメロディーが全開となっており、そこにSarinoの甘目の高音ボーカルが乗ることで、適度に浮世離れした世界観が出ている気がします。
また、サポートメンバーの2人は元JILSのリズム隊ですが、RENはその前ダビデのメンバーとしてミサと一緒に活動していました(当時はエルゼ名義。解散後はダビデのボーカルと共にpleurへ)。

以下各曲について。


01. furitsumoru 〜降りつもる〜
シンセによる、耽美でクラシカルなメロディーをメインとしたインスト。
そのまま次曲へと続きます。

02. 光彩
前曲の旋律を保ったまま展開する疾走曲。デモテープでは「光彩の沈殿」というタイトルでした。
ギターとシンセのクラシカルなハモリを随所に入れつつ、勢いを付けたままサビでキャッチーに歌い上げる展開は、実質的なオープニングに持ってくるのにふさわしいインパクトと、V系王道的な分かりやすさを備えているのではないでしょうか。当時はデモテープでしたが、今なら確実にシングルで切ってきそうな雰囲気を感じます。
また、2010年に一度再結成しオムニバスに1曲参加した際には、この曲が新たに録音し直されて収録されました。

03. 凍てつく世界
ダークなイントロから一転、ザクザクとしたギターが印象的な跳ねたアレンジへ移行するポップチューン。メルヘンチック、あるいはユーモラスにも感じる曲調ながら、どこか恐い雰囲気にダビデの匂いを感じたり。……というかこの曲、「ダビデをまともにしたらこうなる」感がひしひしと……(笑
こちらも、サビでキャッチーに歌い上げます。

04. ファンタジア
ベースの旋律に、こちらもどこかダビデ臭を感じるメルヘンなポップチューン。前半は全曲と同じく跳ねたリズムで展開しますが、後半疾走パートが挿入されるのをはじめ結構展開が多かったりします。そしてサビ前や終盤に入るミサの低音コーラスを聴くと、やはり彼のバンドだなぁと思ったり。

05. 瞬き…
イントロの高速キーボードソロが印象的な、疾走メロディアスチューン。
ギターの刻みや間奏のキーボードソロに、クラシカルメタルの匂いも感じますが、最近のバンドの主流になっている重ためのそれではなく、王道V系な音作りをメインとしつつ良い塩梅で組み合わせている印象です。サビでは再びミサとハモりつつ広がりのあるメロディーを歌い上げたり、終盤、更に疾走感を増した展開が聴けるのもツボ。

06. 蠱惑ナ果実
前面に出たのギターやエフェクトをかけたボーカルによって、モダンでヘヴィな印象を受ける、若干ハード寄りの楽曲。サビに入ると一転してミディアムテンポになり、メロディアスに歌い上げるのは逆に最近ぽいかも、と改めて聴いてみて思ったり。メタル要素で言えばこちらも中々だと思うのですが、この辺りはメタル方面のアプローチを目指し(?)ながら、素人にも一聴して音質が極端にくぐもっているのが分かってしまうのが残念だった、Klein Kaiserでの経験が整理された上で反映されているのかなぁとも。

07. 運命
ハードな出だしから、すぐにダンサブルなアレンジに展開するポップチューン。
パートによって沈んだ調子になったり、ギターソロがクラシカルにピロピロ弾き倒すかと思えば電子音を全面に出したりと、この曲も展開が多いのですが、難解な印象を持たないのはやはりサビにキャッチーなメロディーを持ってきているからでしょうか。

08. 瑠璃蝶
シンセが前面に入っている本作ですが、この曲は特にデジタルの比率が強くなっています(ドラムもほぼ打ち込みかな?)。
とにかく頭から入るサビを始めとするメロのクサさがたまらないというか、他の曲に比べると無機的なアレンジながら、その歌謡クラシカルな旋律にツボを押されまくりなので細かい事はもう良いです(笑
ピコピコ音を交えたシンセソロが続く間奏には、ちょっとゲームミュージックぽさを感じたり。ここも素敵だなぁ。

09. いばらの森
ちょっとゲームっぽいシンセによる導入から(一回入るSE、あれ犬の声でしょうか)、すぐにバンドサウンドで疾走するアッパーチューン。
こちらは派手なアレンジを基本に、ギターとシンセによる印象的なキメのフレーズをはじめとする、やりすぎなまでの歌謡+クラシカルなメロディーが全開となっており、終盤の盛り上がりドコロの一つになっているのではないでしょうか。
個人的に瑠璃蝶→本曲の流れが本作中特に好み。

10. 蒼月の陰影
コロコロと展開を変えるアレンジをバックに、Sarino・時々ミサのツインボーカルで進行する、こちらもダビデが成長したらこうなる的な印象を受けるダークメルヘン+ポップな趣の楽曲。ただ変テコなだけではなく、サビでは憂いのあるメロディーを歌い上げ印象を残すのがAioria流という事でしょうか。

11. 花詞
ラストは、序盤を始めとするインダストリアルチックな展開とボーカルパートとの対比が面白い、耽美なポップチューン。結構ベースがウネウネ動いているんですよね。
サビは1行のみの歌詞をひたすら繰り返すものとなっており、人によってはそこがくどく感じられるかもしれません。ただそのメロディーがまたクサく、バックのアレンジを変えたり途中からツインボーカルにしたりと色々していますので、個人的には気にならないかな。

***

今思うと、こういう曲にSarinoのようなボーカルが乗るのってありそうでなかった組み合わせという感がある点でも面白かったり。
打ち込み導入+クラシカル+何だかんだでポップ、と一貫した雰囲気を保ったまま進むので、最初は似通った印象を持つ人も居るかもしれません(バラードらしいバラードもないですし)。逆にその3要素が好きな人には、10年経った今でも是非手に取って欲しいアルバム。
個人的には、ミサ関連の中でも特に好みな名盤になっています。

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